「一国二制度」中国は譲歩を 民主派重鎮・李柱銘さん

西日本新聞 国際面総合面

 香港民主派の重鎮で立法会(議会)元議員の李柱銘さん(81)が西日本新聞の取材に応じ、中国政府の圧力で崩れかけた「一国二制度」の現状について懸念を語った。 (聞き手は川原田健雄、香港で)

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 一国二制度は香港が中国に返還された1997年から50年間守られる約束だが、機能させるのは容易ではない。例えるなら大人と子どものシーソー遊びのようなものだ。シーソーは大人と子どもがそれぞれ両端に座れば当然、大人に傾く。遊ぶには大人が真ん中に寄ってバランスを取らなければならない。つまり大人である中国政府が譲歩しないとうまく機能しない。

 一方、香港政府は必ず端に座り、香港市民の立場に立たなければならない。それを担保するのが民主的な選挙だ。香港の基本法では香港政府トップの行政長官や立法会議員は普通選挙で選ぶことを将来の目標とした。普通選挙が行われれば、市民の側に立たない行政長官や議員は次の選挙で負ける可能性がある。

 しかし現実には中国政府は約束したはずの普通選挙を認めず、出先機関の香港連絡弁公室を通じて香港政府を操っている。中国政府がシーソーの端に居座り、香港政府が真ん中に寄ってきている状態だ。

 今、香港政府が条例改正で可能にしようとしている中国本土への容疑者引き渡しは、双方が互いの司法制度を信頼し合ってこそ成り立つ仕組みだ。人権派弁護士が突然拘束され、身に覚えのない罪をテレビで“自白”させられる中国の制度を信頼できるはずがない。

 香港政府は政治犯や特定の経済犯罪は「条例の対象外」としているが、とても信じられない。例えば中国人と香港人が商取引でトラブルになった場合、中国側が贈収賄などの刑事犯罪を捏造(ねつぞう)して香港人の引き渡しを求めることだってできる。引き渡された後の人権は守られないだろう。

 改正条例が制定されれば、対象は外国人にも及ぶ。どの国の人も香港に来れば犯罪者として中国に引き渡される恐れがある。国際都市の香港で外国人の安全を保障できなくなる。人権や自由、司法の独立といった先進国と変わらない香港の価値観が守られるか、今まさに試されている。

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