寄り道しようよ 「放課後の居場所」民家など開放 佐賀の市民団体 何してもいい ありのままで 評価はしない

西日本新聞 くらし面

平屋の民家で開く「くむくむ」。学校帰りの子どもと小林由枝さん(右)がカードゲームを楽しんでいた=佐賀県武雄市 拡大

平屋の民家で開く「くむくむ」。学校帰りの子どもと小林由枝さん(右)がカードゲームを楽しんでいた=佐賀県武雄市

 学童保育はいっぱい。外遊びは「危ない」と止められる。結局、習い事で埋めるか、家でネットゲームをするしかない…。子どもの放課後の過ごし方が問題になる中、「いつでも立ち寄れるように」と民家などを開放している市民団体が佐賀県武雄市にある。その名も「よりみちステーション」。宿題、漫画、鬼ごっこ、昼寝など何をしてもいい。支援者でも先生でもない“近所のおばちゃん”が、子どもたちを評価せず指導せず、ありのまま受け止める。そんな空間が、学校帰りの子どもだけでなく、不登校や「行き渋り」の子どもも引きつけている。

 「やば、そうくる?」「白が多くなってきたよ」。オセロゲームを囲んで、児童2人が盛り上がる。ゲーム相手はよりみちステーション代表の小林由枝(よしえ)さん(47)。「小林さん、次はウノやるよ!」

 JR武雄温泉駅から徒歩15分ほど。「くむくむ」の看板が掛かる2LDKの古い平屋に、午後4時ごろから御船が丘小や武雄中の子どもたちがやって来る。6畳間では4人がカードゲームや読書。隣の4畳半では3人が勉強。お小遣いで駄菓子を買って食べる子も。日暮れまで好きなことをして過ごす。小林さんらスタッフが「~しなさい」と言うことはなく、子どもの自主性に任せている。

 小林さんたちが最初の居場所「ぼちぼちや」を同小近くの自治公民館に開設したのは2012年4月。共働きがほとんどの地域。学童保育に行かず、家で一人、留守番をしている低学年も少なくなかった。塾やスポーツ教室で遊ぶ時間が全くない子も。「うちの子を寄り道させてあげることもできなかったなあ…」。ある母親のため息を聞き「親が示した近道を特急で通り過ぎるのではなく、鈍行で寄り道しながら成長するのも大切」と育児サークルの仲間たちでよりみちステーションを立ち上げた。

 毎週水曜の「ぼちぼちや」は20~50人が、水曜を除く平日の「くむくむ」(15年開設)は十数人が利用する。ルールは「ここにいる人と物は大切にする」だけ。当初は「自由に遊ばせるだけでいいの?」と苦言を呈する住民もいたが、「今の子はいつも評価にさらされ気が抜けない。何をしてもいいし、何もしなくてもいい時間が必要」と伝え続けた。スタッフ25人の多くが同小、同中の保護者や元保護者であることも、学校の理解を得やすかった。

 家賃や光熱費、月に数回カレーを振る舞ったり、子どもが料理したりする際の材料費は、民間助成金と賛助会員の会費(一口千円)、イベント時の物販収入で賄う。初めの1年間は保護者に月千円を負担してもらっていたが、「保護者の許可とお金が必要だと来られない子がいる」と改めた。

 あるとき、様子を見に訪れた教諭が「○○君が笑いよる」と驚いていた。教室ではほとんど人と話さない子だった。学校に行けない子も、コミュニケーションが苦手な子も訪れやすいよう、スタッフは昼すぎから鍵を開けて待っている。

 「疲れたとき、いっぱいいっぱいのとき、ここに立ち寄って、少し元気になって帰る。そんな場所になれば」と小林さんは話す。

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