治安改善へ地道な活動 小倉の繁華街NPOパトロール

西日本新聞 北九州版

 発砲や襲撃事件が約5年前まで相次いだ北九州市。「修羅の国」とも揶揄(やゆ)され、治安の悪いイメージに悩まされてきたが、2018年の刑法犯認知件数は6504件で戦後最低となり、ピークだった02年から約84%減った。統計上は「安全安心な街」を取り戻しつつあるが、街を歩いて本当に安全を実感できるようになったのだろうか。市内のNPO法人が取り組む夜間防犯パトロールに同行した。

 ある平日の午後11時。飲食店が軒を連ねるJR小倉駅(小倉北区)前の鍛冶町は、肩がぶつかりそうな酔客や、スーツケースを手にした外国人観光客でにぎわっていた。

 「今は酔っぱらい同士のけんかをたまに仲裁する程度」。NPO法人「日本ガーディアン・エンジェルス」北九州支部(同区)の事務所長、池田尚弥さん(42)は06年からパトロールを続けている。赤いベレー帽とジャンパーがトレードマークだ。

 かつては、暴力団排除の標章を貼った店が襲撃されるなど凶悪事件が頻発した。当時の繁華街には「ヤクザが普通に歩いていた」と池田さん。「うちらも見回りしよるから、なんかあったら言ってこいよ」と話し掛けられることもしばしばあったという。

 現在は約10人のメンバーのうち、毎晩2、3人が交代でパトロール隊を組み、午後11時~午前5時、小倉駅周辺を巡回している。

 警察と違い、犯罪の取り締まりはできない。トラブルを仲裁したり、挙動不審な人物に声を掛けたりして犯罪の芽を摘(つ)むのが主な活動だ。

 「最近どう?」「元気にしてるん?」。時折、スナックのママなどの知り合いに話し掛けるのも活動の一つ。「ほとんどの人が昔からの付き合いです」

 午前0時すぎ、小倉駅近くのベンチに座る若い女性2人に隊員が「寒くないですか?」と声を掛けた。10代だという2人は知人の迎えを待っているといい、隊員は「コンビニなど明るい場所で待った方がいいですよ」と告げて、その場を後にした。

 近年、隊員たちが特に注意しているのは、会員制交流サイト(SNS)を使う少女たちだ。面識のない男性と待ち合わせては性犯罪に巻き込まれるケースが相次いでおり、目を光らせている。

 以前は夜の繁華街で少女たちに話し掛ける男がいたら、隊員たちが声を掛けていた。今は、出会いから待ち合わせまでをSNSで済ませている。「街を歩いて少女を物色する男たちが少なくなり、犯罪の端緒が見えにくくなった」と隊員の一人は語る。

 池田さんが「目的を持って歩いている人、そうでない人を見分けて、声を掛ける相手を選ぶ」と解説するので、記者も道行く人を観察してみた。1人で歩く人、連れだって歩く人、足早に歩く人…。スマートフォンを見ながら周りをきょろきょろと見渡す女性を見掛け、誰を待っているのかと不安に思えてきた。

 ただ、この日は大きなトラブルもなくパトロールを終えた。一晩だけだが街を歩いた実感としては「安全安心な街」に思えたが、そんな街にも常に犯罪の影が潜んでいるのだろう。治安改善の背景には、一件でも犯罪を減らそうと地道に活動する人々の存在があるのだと感じた。

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