【動画あり】「捕る漁業」伝統つなぐ 佐伯市鶴見の「船びき網漁」に同行

西日本新聞 大分・日田玖珠版

 県内随一の漁業生産地佐伯市の鶴見は、好漁場に恵まれた県南地方でも特に「捕る漁業」が盛んだ。佐伯湾は魚種が豊富で、それに応じた多様な漁法で漁師たちは魚を捕ってきた。その一つ「船びき網漁」に同行すると、ハイテクに経験と勘も駆使して獲物を追う漁師の姿があった。第1次産業の例に漏れず、鶴見も後継者不足など環境は厳しいが、海部(あまべ)の伝統を次代につなぐ取り組みも続いている。(堀田正彦、写真・吉良けんこう)

【動画】大分県佐伯市で古くから行われている「船びき網漁」 

 船びき網漁は2隻の網船が網を引き、シラス(カタクチイワシの稚魚)などの群れを一網打尽にする。網は長さ約150メートル、引き綱も含めると最大400メートルにもなる。魚群を探す電探船と運搬船が付随し4隻で1統の船団を組む。網を引くのは1回あたり2時間程度で、1日に1~3回引く。

 青空の広がった6日、「丸十水産」社長で電探船船長の野村重徳さん(52)は、操舵(そうだ)室で魚探やソナー、レーダー、衛星利用測位システム(GPS)装置の画面をにらんでいた。網船に無線でこまめに引き方の指示を送る。刻々変わる僚船との位置関係がレーダーに映し出されていた。

 「探知した通りに魚が動くとは限らんけな。違う魚に見える魚探の反応が実は狙いのシラスだったりもする。そこは経験と勘で補うんよ」。この道30年以上の野村さんは言った。

 数百メートル間隔で並走していた網船がやがて見る見る近づき、接舷すると網を巻き上げ始めた。運搬船と電探船も合流する。魚の取り込みは4人が力を合わせる。シラスは鮮度が命。手早く収容すると、運搬船は急ぎ港へ向かう。この日の漁獲は「いまひとつ」(野村さん)の640キロだった。

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 野村さんによると、佐伯湾全体で常時操業している船びき網船団は9統。鶴見で許可を持つ5統のうち実働しているのは3統という。燃油高や市況も気掛かりだが、最大の課題は後継者不足と野村さんは話す。「うちは息子が一緒にやっとるし、30代の従業員もおって恵まれとるが、高齢化した船団は引退する船員を補充しようにも人が来ん」

 鶴見の中心を占める巻き網船団では、漁労員不足を補うため3年前から外国人実習生を入れている。だが「船びきは船を操れんといかんから、簡単に外国人実習生で、とはいかん」。

 鶴見の漁業就業者は約300人。高齢化と担い手不足は他の漁でも深刻だ。県漁協鶴見支店によると大島の一本釣り漁師の平均年齢は71歳。80歳代の漁師もいるという。就職フェアに参加するなど担い手確保に努めているが現実は厳しい。

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 こうした中、市鶴見振興局は地域の誇りである水産業の「今」を記録・発信し、振興と継承に役立てようと、3年がかりでガイドブック作りを進めている。

 7種の漁法を、水揚げされる約130種の魚とともに写真や図解付きで紹介。料理人や仲買人が鶴見の魚を語るコラム、流通の仕組み解説など、鶴見の水産業を網羅的に取り上げる。A4サイズ68ページで1万部を年内に発行の予定だ。

 振興局の休坂(きゅうさか)武志副主幹によると、消費地のレストランなどに直接納品するケースも増えており、産地をアピールするツールとして活用する。「鶴見の認知度を上げブランド化を図り、ひいては魚価を上げたい」

 ガイドブックは市内の小中学校にも配る。鶴見は市場に常時50種類以上の魚が揚がる海の町だ。だが今は地元の子どもでも漁業をあまりよく知らないという。「ガイドブックが漁業に興味を持つきっかけになり、将来の就業につながれば」。県漁協鶴見支店の山田正喜支店長は期待を語った。

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