ブーゲンビリアが恩返し 愛情に応え“枯死”から満開に

西日本新聞 ふくおか都市圏版

松本ヨツエさんの自宅を覆うように花を咲かせるブーゲンビリア 拡大

松本ヨツエさんの自宅を覆うように花を咲かせるブーゲンビリア

2階のベランダに到達しているブーゲンビリアと松本さん

 寒波のため枯れ果てたと思われていた大きな木が、再び色鮮やかな花を咲かせた。福岡市早良区の松本ヨツエさん(75)宅のブーゲンビリア。花見に訪れる多くの人に元気と希望を与え、松本さん宅を出会いと憩いの場にもしてきた。以前と変わらないほど満開に咲き誇るその姿は、25年以上、大切に育て見守ってきた松本さんに対する「恩返し」のようでもある。 

 松本さんが、自宅の庭にブーゲンビリアを植えたのは1991年。「いらない」という知人から苗木を譲り受けた。松本さんが申し出なければ、捨てられていたかもしれない。

 苗木はめきめきと伸び、8年ほどで2階建ての自宅の南側を覆い尽くすほどに育った。ベランダが「占領」されても、枝を切るよりベランダ増築を選択。その後も増築を繰り返すほど、木の生長をめでた。

 高さ約7メートルから垂れ下がった枝が横幅約7メートルにわたり満開になると、「花の滝のよう」と近所で話題に。口コミでうわさが広がり、新聞やテレビでも取り上げられた。開花時期には毎年150人が見物に訪れた。松本さんはベランダからも木を見てもらいたくて、自宅に客を招き入れた。

 ある高齢男性は末期がんでふさぎ込み、たびたび「死にたい」とこぼしていた。松本さんが2階に案内すると、男性は「おー」と感嘆の声を上げた。リビングでお茶を出し松本さんが語りかけると、「来年も見たいから死ねない」。

 うつで笑顔が消えていた女性は、花を見てほほえんだ。一緒に来ていた娘は「母が笑った」と涙を浮かべて喜んだ。女性は出されたお茶のコップを進んで洗い、感謝を述べた松本さんに再び笑顔を見せた。

 「ブーゲンビリアがたくさんの人を笑顔にし、私に出会いを与えてくれた」。松本さんは満開時の写真を玄関に何枚も飾り、県内各地からの見物客との触れ合いを毎年心待ちにした。

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 そんな喜びを一変させたのが、16年1月に九州を襲った大寒波だった。

 南米原産のブーゲンビリアは、もともと寒さには弱い。春が訪れても、新芽も葉も出なかった。「まだ生きているかもしれない」「もうちょっと待とう」…。それでも、木の時間は止まったままだった。

 諦めた松本さんは16年7月、夫とともに木を切った。幹は内部まで枯れていた。知人は口々に「寂しいね」と慰めてくれたが、松本さんは「人生が終わったような感覚」さえも味わった。気持ちを切り替えようと、玄関を彩っていた満開時の写真も減らした。

 翌17年の春、驚くようなことが起こった。長めに幹を残していた切り株の付近から、新たな芽が出始めたのだった。18年には約2メートルになると、今年は急激に伸びた。横幅約6メートル、高さは約7メートルとかつてと変わらないほどに生長し、満開となった。

 「すごい生命力。私の愛情が伝わったのかな」。松本さんは明るく声を弾ませる。ブーゲンビリアの花言葉は「情熱」や「あなたしか見えない」。その言葉を体現するかのように、よみがえった大木は当時よりも色濃く、あでやかな紫色の花を風に揺らしている。

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 見ごろは6月いっぱい。松本さんは「多くの人に見てもらいたい」として期間中は自宅(早良区原7丁目8の25)に滞在しているという。

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