初の米朝首脳会談から1年 非核化停滞、埋まらぬ溝

西日本新聞 国際面総合面

 【ソウル池田郷】トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が「朝鮮半島の完全非核化」の方針を確認した史上初の米朝首脳会談から12日で1年。歴史的な一歩を踏み出したかにみえた両首脳だが、経済制裁の解除時期を巡る主張の溝は埋まらず、交渉は膠着(こうちゃく)状態だ。北朝鮮はこの間も核・ミサイル戦力の増強を続けているとみられ、核を手放す意思に懐疑的な見方も根強い。両首脳は対話再開の姿勢を維持しているが、3度目の会談開催のめどは立っていない。

 「わが国を軍事的に圧殺するために行われた犯罪的な会談だ」。北朝鮮の内閣などの機関紙「民主朝鮮」は11日、韓国で3日にあった米韓国防長官会談を強い言葉で非難した。

 2月に開かれた2度目の米朝首脳会談が決裂。北朝鮮はそれ以降、会談で永久廃棄を提案した寧辺(ニョンビョン)の核施設でウラン濃縮を続けているとみられる。短距離ミサイル発射などの軍事的挑発も再開したが、米国本土が射程に入る大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射は回避するなど、米国への一定の配慮もみせる。

 米韓を揺さぶる意図について、東国大(韓国)北朝鮮学科の高有煥(コユファン)教授は「正恩氏にすれば、苦労して手にした核を簡単に手放す理由はない。米側が譲歩しなければ対話は再開しないつもりではないか」と指摘する。ただ、北朝鮮が求める非核化の段階に応じた制裁解除は、トランプ氏が4月の米韓首脳会談で明確に否定しており、妥協の余地は見いだしにくい。

 米朝首脳の仲介役を務めてきた韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領にも手詰まり感が漂う。北朝鮮宣伝メディアは5月、韓国が検討する北朝鮮への人道的食糧支援に関連して「恩着せ行為」と反発。文政権を突き放すような姿勢が目立ち、韓国が求める4度目となる南北首脳会談の開催時期も不透明だ。

 文氏とトランプ氏は6月末にも、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)の終了後に韓国で会談する。峨山(アサン)政策研究院(韓国)の高明賢(コミョンヒョン)研究委員は「G20の帰路に慌ただしく寄る日程で、踏み込んだ内容になるのか」と悲観的だ。

 正恩氏は4月の施政演説で「年末まで忍耐心を持って米国の勇断を待つ」と表明した。慶応大の小此木政夫名誉教授(現代韓国朝鮮論)は、正恩氏が来秋の米大統領選の日程を念頭に「トランプ氏が最も嫌な時期を見定めて、中長距離のミサイルを発射するなど挑発の度合いを強める可能性がある」と指摘する。

 小此木名誉教授は来年以降、北朝鮮がかつての「瀬戸際外交」に回帰する可能性に触れる一方で、「両首脳は今もトップ同士で解決策を探ろうとの望みを持っている」と、電撃的な合意にも含みを持たせた。

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ