全ての医ケア児対象に九州初 福岡県予算案 訪問看護もっと長時間に 親の負担軽減へ補助

西日本新聞 くらし面

小児の訪問看護ステーション「にこり」の看護師らに自宅で見守りを受ける1歳児。医療的ケアが必要だ=北九州市小倉北区(提供写真) 拡大

小児の訪問看護ステーション「にこり」の看護師らに自宅で見守りを受ける1歳児。医療的ケアが必要だ=北九州市小倉北区(提供写真)

 重い障害がないにもかかわらず、たんの吸引など医療的ケアが必要な「歩ける医ケア児」を自宅で介護する保護者の負担を軽減しようと、福岡県が具体策に乗り出した。通常、医療保険では短時間に限られる訪問看護を、自治体独自の福祉サービスとして1日8時間まで利用できるようにする市町村への補助事業を、本年度一般会計当初予算案に盛り込んだ。医ケア児すべてを対象にしており、こうした制度は都道府県では九州初という。関係者は「24時間のケアに明け暮れる親が、息抜きできる選択肢が広がる」と歓迎している。

 ▼重症児以外でも

 「従来の枠組みでは支援を受けられない医ケア児がいる。家族も含め地域生活を支える制度にした」と県障がい福祉課は強調する。

 医ケア児は肢体が不自由で知的に遅れもある重症心身障害児(重症児)が多い。一方で医療が進歩し、気管を切開して喉にチューブを入れたり、人工呼吸器を使ったりしていても知的な遅れもなく、自由に歩ける子どもが増えている。中には障害者手帳も持っておらず、重症児なら公費で大部分が負担される福祉サービスを受けられない例も少なくない。県はこうした歩ける医ケア児・者の数を把握するため、2018年度に実態調査を実施。結果、18歳未満のうち24・3%が寝たきりではなく、一人で歩ける子どもも14・7%いることが判明した。

 医ケア児の過半数が気管切開しており、たん吸引や胃ろうなどの管を使った栄養注入が必要な子どもも8割超。主に母親から介助を受けている子がほとんどで、主な介助者の平均睡眠時間は5・07時間。寝る間もない親たちに休息を取ってもらう役目として、県は「医療に関する専門的知識があり、日頃から医ケア児に慣れている」(同課)訪問看護師に着目した。

 ▼市町村と折半で

 訪問看護は、看護師が自宅を訪れ、主治医の指示に従って看護を提供し、療養生活を支援する。医ケア児には医療保険が適用され、重症児であれば自治体側のさまざまな自己負担軽減制度もあり、実態調査によると「毎月」「時々」の利用者は計83・1%。ただし医療保険では、1回の利用時間が在宅で複数の種類の医ケアが必要な子どもでも、90~120分に限られる。

 そこで県は、訪問看護料(1時間当たり上限7500円)を、県と医ケア児が居住する市町村が2分の1ずつ負担し、訪問看護ステーションなど事業者側に支払って、看護師を自宅に派遣してもらう制度をつくる。1日最大8時間、年間6日まで利用可能とし、利用者の自己負担は1割と想定。県内60市町村の過半数が検討に入る意向を示しているという。

 同課によると、医ケア児の保護者の負担軽減策として、訪問看護師の派遣費を自治体が負担するサービスは、県内では久留米市が2017年、福岡市が18年から既に開始。しかし久留米市は対象者を重症児に、福岡市は人工呼吸器の使用者に限っている。

 都道府県レベルでは鹿児島県が重症児などに限定して実施しており、医ケア児すべてに門戸を広げるのは東京に続いて2例目とされる。

 ▼もっと選択肢を

 ただ、18年度までの利用実績は久留米市では計3人(延べ36回)、福岡市は計7人(延べ16回)にとどまる。わが子を見守ってくれる存在とはいえ「他人を自宅に迎えることを、煩わしく感じる人も少なくないのでは」と久留米市の担当者。

 福岡市では通常の訪問看護を利用する場合、自己負担軽減制度などで料金がゼロになる例もあるが、市独自のサービスでは低所得者などを除き、1時間当たり540~750円を支払う必要がある。長時間の利用に、二の足を踏む向きもありそうだ。

 福岡県岡垣町で、小児の訪問看護ステーション「にこり」を開設して3年目となる看護師の松丸実奈さん(40)は「子どもは生まれる場所を選べない。同じ県内に住んでいるのに、訪問看護師による長時間の見守りが地域によって格差があるのは是正すべきだと考え、県にも要望していたので、今回の制度は歓迎したい」と評価する。ただ、子どもの医ケアに慣れた看護師の数は十分とは言えず「マンパワー不足などで、参入したくても難しい事業所もあるのでは」とみる。

 親の負担軽減策としてはほかに、人件費が看護師ほどは高くない訪問介護(ヘルパー)や一時預かりする短期入所などがある。「利用者側の選択肢を広げるためにも、他のサービスについても自治体独自の補助など支援を検討してほしい」と願う。 

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