絆のハナショウブ、被災の仲間つなぐ 九州豪雨で大刀洗に移住した72歳 丹精込め栽培

西日本新聞 筑後版

ハナショウブを育てた井上光さん(後列左)と妻のキヌ子さん(前列左から4番目)。花をバックに、鑑賞者にも笑顔が広がる=11日、大刀洗町栄田の天満神社 拡大

ハナショウブを育てた井上光さん(後列左)と妻のキヌ子さん(前列左から4番目)。花をバックに、鑑賞者にも笑顔が広がる=11日、大刀洗町栄田の天満神社

 一昨年の九州豪雨で被災し、朝倉市杷木松末から大刀洗町栄田へ移住した井上光さん(72)が育てたハナショウブが満開となった。散り散りになったかつての「ご近所さん」を含め、豪雨被災地からも多くの人々が訪れ、美しい花に心をなごませている。

 ハナショウブは栄田の上稲数地区にある天満神社横の畑に咲く。広さ約700平方メートルを、深い紫の花が優雅に彩っている。

 松末に生まれ育った光さんは2017年7月、妻のキヌ子さん(71)とともに被災。道路が寸断され自宅に孤立し、救助されたのは2日後だった。栄田にあるキヌ子さんの実家から株分けして毎年咲いていたハナショウブや、バラ園は全滅。「近所の人も散り散りばらばらになって…」とキヌ子さんは嘆く。

 自宅倒壊は免れたものの裏山が崩れそうなため、夫妻はキヌ子さんの実家に転居。光さんは仕事の合間を縫って、ハナショウブを増やしながら、草取りや水やりをして手塩にかけて育ててきた。「みんなに喜んでもらえたら」と、昨年から被災者を招き、希望する人には株も分けている。

 光さんはさらに、周辺の畑で野菜も育て始めた。畑を失った被災者へ届けるためだ。

 今年も6月に入って連日、夫妻の友人・知人や口コミで知った人らが訪れている。11日にも光さんの同級生など十数人が集まった。「今は毎日同窓会のよう」。故郷の山々を望む畑で、光さんは今日も汗を流す。

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