田中久弘さんを「郷土直方」特集 演劇文化普及に貢献、3月に急逝

西日本新聞 筑豊版

 児童演劇の「劇団飛行船」(川崎市)を育て、「直方芸術鑑賞協会(直方芸協)」などを通じて故郷で演劇文化の普及に貢献し、3月に急逝した直方市出身で同劇団名誉会長の田中久弘さん(享年87)について、直方郷土研究会が5月下旬に発行した会報「郷土直方第44号」の巻頭で特集を組んだ。「ふるさとの演劇人と私」と題して田中さんがつづった遺稿も掲載。「偲(しの)ぶ会」が15日午前11時半から同市頓野のエクセレントガーデンで開かれる。

 会報に追悼文を寄せた直方市民劇場の原田周蔵事務局長は「命と向き合う仕事をしていた炭鉱から人間の根源を見つめる芸術がさまざまな形で表れ、その一つが演劇だった。産炭地に文化の火をともそうというエネルギーを持ち続けていたのが田中さん。幅広い知識と教養を持った文化人だった」と評する。

 遺稿によると、田中さんが鞍手高在学当時の終戦直後、直鞍地区の高校で演劇活動が盛んだったことがうかがわれる。卒業生が劇団「人間座」や中央から劇団を招へいする「直方演劇協会」を立ち上げ、田中さん自身も同協会や直方音楽文化協会、映画サークルが集まった会員制の「直方芸協」設立に関わり、1960年春まで活動した。

 その後、影絵劇団「角笛」や「劇団飛行船」に参加し、78年から96年まで「劇団飛行船」社長。ぬいぐるみ人形劇「マスクプレイ・ミュージカル」を確立した。「故郷に恩返しをしたい」と、2017年から同劇団による「オズの魔法使い」、「ブレーメンの音楽隊」の直方公演を2年連続で実現させ、さらに「直方幼児・学童演劇鑑賞促進会」を開設。公演誘致や鑑賞の推進母体をつくった。

 直方公演を支援した関係者らに宛てた報告書では「郷土と関係のある著名な劇団をはじめ、他劇団も招へいして、幼児と小学生を対象に演劇鑑賞の機会をつくっていきたい」との意欲を示していた。直方市出身で「直方芸協」にも関わった白石晴二氏(故人)が創設した「角笛」などの招へいが念頭にあったという。

 直方郷土研究会の牛嶋英俊会長は「会報への寄稿を書いている途中に入院され、遺稿となった。戦後の一時期をシャープに切り取り、直方で演劇活動がいかに盛んだったかを示す内容で、歴史資料としても極めて貴重。身銭を切ってまで、地元の子どもたちにいい演劇を見せたいと尽力され、頭が下がる」と悼んだ。

 

■志半ばだった

 中村幸代・直方文化連盟元会長の話 子どもの心を育む文化活動として、児童演劇の発展に尽力され、2010年に「直方文化賞」(特別部門)を差し上げたときには大変喜んでくださった。直方公演では、ご自身で各所を駆け回りながら準備をされ、一生懸命だった。直方に(事務所の)看板を掲げた後に亡くなられ、志半ばだったと思う。

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