首相イラン訪問 緊張緩和まで仲介続けよ

西日本新聞 オピニオン面

 世界が注目する「仲介外交」は成功するのだろうか。

 安倍晋三首相がイランを訪問し、ロウハニ大統領や最高指導者のハメネイ師と会談した。核開発を巡る米国とイランの対立が緊迫化する中で、両国を取り持って緊張緩和のきっかけをつくるのが訪問の目的である。

 イランと米国、ロシア、英国、フランス、ドイツ、中国は2015年、イランの核開発を大幅に制限する見返りに経済制裁を解除する合意を結んだ。これで危機は回避されたかと思われたが、イランを敵視する米トランプ政権は昨年、核合意からの一方的な離脱を表明した。

 その後米国は関係国にイラン産原油の禁輸を強要し、中東に空母を派遣するなどして圧力を極度に強めている。反発するイランとの間で偶発的な軍事衝突の危険性も高まる。

 こうした状況を受けて、トランプ氏と緊密な関係を築いている安倍首相が、伝統的に良好な日本とイランとの関係も生かして、仲介に乗り出した。

 米国とイランの相互不信は根深く、対話を始められる状態ではない。安倍首相が国際政治上のユニークな立場を生かし、仲介役を果たそうとする姿勢は評価できる。受け身に回ることが多い日本外交にとっても、かつてなく積極的な試みと言える。

 安倍首相は、ロウハニ師との会談後の記者会見で「何としても武力衝突を避ける必要がある」と強調し「緊張緩和に向けて日本としてできる限りの役割を果たしたい」と決意を示した。

 一方、ロウハニ師は「イランに対する米国の経済戦争が原因だ。これをやめれば前向きの変化が起きる」と述べ、米国に原油禁輸制裁を停止するよう呼び掛けた。イランは安倍首相に、制裁停止要求をトランプ氏に伝達するよう依頼したという。日本への期待がうかがえる。

 ただ、仲介の先行きは見通せない。原油禁輸は米国のイラン制裁の核心だ。「反イラン」で突き進むトランプ氏を説得し、圧力路線を転換させるのは安倍首相にとっても容易ではない。

 首相には、参院選に向けて外交での得点をアピールしたい思惑があるかもしれない。しかし国内政治の次元の話ではない。うまくいかないならすぐやめる、というような姿勢では、国際社会の信用を失う。関与には一定の覚悟が必要となる。

 安倍首相のトランプ氏との「緊密な関係」の内実が試される局面である。緊張緩和が実現するまで粘り強く、米国-イランの仲介役として動くべきである。同時に、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)でも、議長国として中東安定の国際世論づくりを主導したい。

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