【動画あり】「再審早く」原口さん92歳に 大崎事件 最高裁の“沈黙”に焦り

西日本新聞 社会面

 1979年に鹿児島県大崎町で男性の変死体が見つかった「大崎事件」で、殺人罪などで服役し、無実を訴えて裁判のやり直しを求めている原口アヤ子さんが15日、92歳になった。第3次再審請求では地裁、高裁ともに再審開始を認めたが、検察側の特別抗告により最高裁に審理が移って1年3カ月。「本人が元気なうちに再審無罪を法廷で聞くことに意味がある」。高齢の原口さんの健康状態に気をもむ弁護団は焦りを募らせている。

 「地裁、高裁が全速力でいいバトンをつないでくれた。なのに、アンカーの最高裁が何をやっているんだと言いたい」。今月7日、誕生日を前に入院先の鹿児島県内の病院で開かれた誕生会の後、大崎事件弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は言葉に怒りをにじませた。

 第3次再審請求では、2017年6月の鹿児島地裁決定が約2年、18年3月の福岡高裁宮崎支部決定は約8カ月で再審開始を認める決定を出した。いずれも1次、2次の再審請求と比べ、各裁判所の段階で最も早い。弁護団によると、3者協議を通じて裁判所も原口さんの年齢に配慮する意思が感じられたという。

 第2次再審請求において半年ほどで弁護側の特別抗告を棄却した最高裁は、第3次では“沈黙”を守ったままだ。地裁、高裁は事前に決定日の通知があるが、最高裁はない。確定判決を覆す方向なら時間はかかるとの見方もあったが、今年3月に再審無罪になった熊本県の「松橋(まつばせ)事件」の再審請求では、最高裁が約10カ月で検察側の特別抗告を棄却したため、「最高裁の判断は早いかもしれない」との期待もあった。

 だが、今年1月、最高検が新たな法医学鑑定書を添え、高裁が新証拠と認めた男性の死因の法医学鑑定(弁護側)の信用性を否定する意見書を提出した。「転落事故による出血性ショック死だった可能性が高い」とする弁護側の鑑定を高く評価して再審開始を支持した高裁決定を巡り、最高裁で判例違反にあたるか審理が続いているとみられる。

 また、最高裁では、記録を読んで裁判官に報告を上げる大崎事件担当の調査官が今年の春から2人に増えたという。弁護団は「最高裁にどういう意図があるのか推測でしかないので、早く決定を出してほしいとしか言えない。時間はない」と語る。

 事件から40年。捜査段階から一貫して「やっちょらん」と否認してきた原口さんだが、最近は会話は難しい。ただ「周りから言われていることが分かっているので、言葉が出ないことがもどかしそう」と鴨志田弁護士。「大崎はすでに3回も再審開始決定が出ているのに、冤罪(えんざい)救済にこんなに時間がかかるこの国の司法は一体何なのか。検察官抗告などを含め、再審制度の法律を変えないといけない」と話している。

【ワードBOX】大崎事件

 1979年10月、鹿児島県大崎町で農業男性=当時(42)=の遺体が自宅横の牛小屋の堆肥から見つかった。県警は義姉の原口アヤ子さんら親族計4人を殺人や死体遺棄の疑いで逮捕。原口さんは一貫して否認したが、81年に懲役10年が確定し満期服役した。95年に再審請求、2002年に鹿児島地裁は再審開始を認めたが、福岡高裁宮崎支部が取り消し、第2次請求も退けられた。15年7月に第3次請求。鹿児島地裁は17年6月、原口さんと元夫の再審開始を認めたが、検察側が即時抗告。18年3月に福岡高裁宮崎支部も再審開始を認めたものの、検察側が特別抗告した。

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