タンカー攻撃 日本は緊張激化の阻止を

西日本新聞 オピニオン面

 中東・イラン沖のホルムズ海峡で13日朝(日本時間同日昼)、日本の海運会社が運航するタンカーが攻撃を受けた。

 乗組員は退避し、タンカーは航行不能となった。同じ頃、付近の別のタンカーも攻撃されて炎上した。いずれも何者が攻撃したのか分かっていない。

 ホルムズ海峡は、サウジアラビアなど産油国発のタンカーがペルシャ湾からアラビア海へ抜ける海上交通の要衝だ。日本の場合、輸入原油の8~9割が同海峡を通過する。日本のエネルギー供給の生命線といえる。

 その場所でタンカーが攻撃されて原油輸送に支障が出れば、日本の産業、市民生活への影響は極めて大きい。それだけでも深刻だが、この事件はさらに中東全体を巻き込む重大事態に発展しかねない危険をはらむ。

 危機の背景にあるのは米国とイランの対立だ。米トランプ政権は中東地域に空母を派遣してイランへの圧力を強めている。イランは反発し、ホルムズ海峡の封鎖を示唆して米国に徹底的に対抗する構えを見せている。

 こうした緊張を緩和しようと、安倍晋三首相が今週イランを訪問し、最高指導者ハメネイ師らと会談して米国との仲介役を担う意思を示した。攻撃はまさにこのタイミングで起き、緊張緩和の動きに水を差した。

 事件を受けて米国は早速、ポンペオ国務長官が「イランに責任がある」と非難し、「イランの関与」を断定した。米国内の対イラン強硬派からは一層の軍事的圧力を主張する声が高まりそうで、そうなれば米国-イランの対立は一触即発となる。

 しかし、日本の中東専門家の間では「イラン関与説」に懐疑的な見方が強い。最高指導者が日本を仲介役にした打開策を模索している最中に、米国の軍事介入を招きかねない事件を引き起こすのは不合理だからだ。

 イランは関与を否定し、米国や中東の「反イラン」諸国による陰謀説を展開している。今後は事件を巡る真偽不明の情報が飛び交い、米国、イラン、中東諸国によるプロパガンダ(政治宣伝)合戦となるだろう。

 日本は、プロパガンダから距離を置き、中立の立場で緊張緩和に導く役割を果たしたい。2003年のイラク戦争で日本は米国に引きずられ「大量破壊兵器」の偽情報で米国の開戦を支持した。今回はその失敗を教訓に、安倍首相がトランプ大統領に対し、安易な軍事行動に走らないよう説得すべきである。

 同時に、ホルムズ海峡を航行する船舶の安全確保のため何ができるか、多国間で検討を急ぐ必要がある。これを機に、長年の課題であるエネルギー供給元の多角化も早急に進めたい。

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