山の活性化、移住者が奮闘 林業女子会@さが会長の門脇恵さん

西日本新聞 佐賀版

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林業女子会@さが会長の門脇恵さん

 5月下旬、佐賀市三瀬村の田園地帯であった自然を五感で味わうイベント。会場には木々を利用したハンモック、棚田の周囲には座布団も敷かれ、900人に上った参加者は、思い思いにゆったりと時が流れる癒やしの空間を満喫した。イベントを企画した一人で「林業女子会@さが」の会長、門脇恵さん(33)は「中山間地を活用すれば地域も豊かになる」と語る。

 東京都出身で、小学校の6年間は三重県伊勢市で過ごした。海と山に囲まれた町で、「夏はこんがり日焼けするほど外で遊んだ」という。その後、関東に戻り、大学卒業後は都内の生命保険会社などに勤めていたが、2014年、何の縁もゆかりもない佐賀市に移住した。

 きっかけは、東京であった全国の自治体が移住者を募るイベント。偶然に会場を訪れ、数ある自治体の中で佐賀市が目に留まった。当時は名刺一枚でいろんな人に会う仕事にやりがいを感じながらも、緑あふれる暮らしから遠ざかり、寂しい思いもあった。「直感」で同市の現地説明会に参加。そこで富士町に移り住んで地域の活性化に一役買う地域おこし協力隊員の存在を知った。「他の自治体が移住ブームで盛り上がり切っている中、佐賀市はまだ伸びしろがあり、魅力的だった」。協力隊員に応募し、見ず知らずの土地で活動を始めた。

 当初、戸惑いはあった。地元の人の方言に「何を言っているか分からなかった」と苦笑する。九州は温暖な気候と思っていたのに冬の積雪にも驚いた。都心のように電車はなく、車がないと不便な生活に29歳で普通免許を取得した。だが、畑を耕して農作物を作り、季節の料理を食べる地域のお年寄りたちに「生きる力を感じた」。何より、移住者を快く受け入れてくれた地域の人情がうれしかった。

 一方、山間部で生活を送る中で感じたのは「メディアでも取り上げられることの多い農業に比べ、林業は情報発信が不足している」ということだ。そこで移住1年目にメンバー4人で結成したのが林業女子会。「中山間地への関心を楽しく、気軽に育む」のがモットーで、肩肘張らない、緩い雰囲気が漂うが活動は本格的だ。

 まずは生産から加工までを知ろうと、県内の製材工場を見学し現場を学んだ。ある時は長さ4メートルの原木をテーブルに仕立て、地域のコミュニティーカフェに寄贈。おのやノコギリを握るのもおぼつかなかったが、最近はDIY(日曜大工)にも慣れてきた。子どもたちと一緒に丸太を切って絵を描いたり、メダルを作ったりすることで林業への関心を持ってもらう活動にも力を入れる。

 メンバーは県内の約20人に広がり、製材の過程で不要になった端材を活用し、ウォールアートとして価値ある物に変える試みを始めた。会に対する周囲の見る目が少しずつ変わってきたと実感する。「初めはお客さんのように思われていたけど、山を大切にしようという取り組みへの理解が広がってきた」

 地域おこし協力隊員の任期は終わったが、今も地域づくり団体のNPO法人「ムラーク」の一員として富士町に残る。林業女子会以外にも地域を拠点とする同市婦人林業研究会に所属し、地元のウバユリを原料とする昔ながらのゆり菓子を復活させた。同市の富士町や三瀬村で増えつつある移住者たちで集まっては中山間地の活性化のアイデアも練る。

 「地域の人たちに頼られることも増え、居心地が良いのかな」。豊かな山暮らしを当分、手放すつもりはない。

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