「200万人」香港再びデモ 「悪法撤回」民意うねり 現地同行ルポ

西日本新聞 国際面

 【香港・川原田健雄】香港で16日、中国本土への容疑者引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改正に反対する大規模デモがあり、主催者によると103万人だった9日のデモを上回る200万人近くが参加した。香港政府は事態の沈静化を図ろうと、15日に条例改正の審議延期を発表したが、抗議活動はむしろ拡大。「悪法を撤回しろ」。怒りの黒服に身を包み、気勢を上げる参加者とともに街を練り歩いた。

 デモのコースは、香港島北部のビクトリア公園から立法会(議会)までの約3キロ。スタート前、デモ隊の先頭に歌手のデニス・ホーさん(42)がいた。民主選挙の実現を求めた2014年の大規模デモ「雨傘運動」で学生らを支持。以降、中国大陸で仕事がなくなったという。「中国政府に不当な圧力をかけられたが、若者が頑張っている今こそ、大人が立ち上がらないといけない」と力を込めた。

 参加者には中高年の姿も目立つ。車永健さん(62)はエンジニアだった1989年、天安門事件の学生を支援する香港のデモに加わった。12日に起きたデモ隊と警察の衝突ではゴム弾が市民に発砲された。「六四(天安門事件)のようにならないか危機感がある。市民を傷つけないでほしい」と香港政府に求めた。

 「今すぐ撤回しろ」「ヘルプ香港!」。公園を出たデモ隊はシュプレヒコールを上げながら大通りを西へ進む。沿道から香港政府トップの林鄭月娥行政長官の似顔絵入りプラカードが回ってきた。「林鄭不是我老母(林鄭は私の母じゃない)」と書かれている。林鄭氏は市民との関係を母子に例えるが、7歳の娘を連れた40代女性は「子ども(市民)の話を聞かない母親なんていない」とばっさり。

 公園から400メートルほど西へ大通りを進むと歩みが急に遅くなった。沿道の人が次々と加わり、デモ隊が一気に増えたからだ。気温28度、湿度75%。蒸し風呂のような暑さの中、「牛歩」のように隊列はゆっくりと進む。暑いだろうに、マスク姿の参加者が少なくない。「警察に身元を特定されないためだ。誰が見ているか分からない」と30代女性が教えてくれた。

 しばらくして写真を撮ろうと振り返ると、隣の男性がこちらにスマートフォンのカメラを向けていた。「何を撮ってるのか」。男性が渋々見せたスマホには、記者のメモ帳や顔を撮影した写真が何枚もあった。「日本の文化に興味があって…」と釈明する言葉は中国大陸なまりの広東語。中国当局の協力者が取材内容を盗み見ようとしたのか。デモの中にこんな人物が何人紛れ込んでいるのか‐。むせかえるような熱気の中、急に背筋が寒くなった。

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