被爆「生の声」余さず後世へ 長崎の平和祈念館が「体験記」募集

西日本新聞 社会面

 被爆体験記を収集、公開している国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館(長崎市)は今春、市内在住の被爆者健康手帳所持者全員に、体験記の寄贈を呼び掛ける手紙を送った。この夏で被爆から74年。「被爆者なき時代」が確実に迫る中、被爆地の行政側が被爆者一人一人に生の声を残すよう直接求めた初の試み。凄惨(せいさん)な体験を可能な限り積み重ねて継承し「ナガサキを最後の被爆地に」との訴えを強めていく。

 同館は、厚生労働省が10年に1度実施している被爆者実態調査(抽出)で寄せられた長崎、広島での被爆者延べ約5万5千人分の体験記を公開。2003年7月の開館以降、独自に集められた手記や日記も閲覧できる。職員の聞き取りによる執筆代行や証言映像の撮影にも取り組んでいる。

 全国の被爆者の数は昨年3月末現在で15万4859人まで減少し、平均年齢は82・06歳。「被爆者の高齢化で、話を聞ける人がここ数年で確実に減ってきた」(担当者)という。証言を掘り起こすため、長崎市に協力を依頼。4月に市内の手帳所持者約2万7400人に送付される援護制度に関する書類に「依頼文」を同封し、被爆者に直接働き掛けることにした。既に近年の収集ペースを大きく上回る約30人から新たに体験記が届き、代筆の依頼も70件を超えている。

 同市内の70代男性は、今回の呼び掛けをきっかけに、十数年前に家族のために書いた体験記を寄せた。体調不良に苦しみ続けてきた半生をつづっている。男性は「家族以外に見せるつもりはなかったが、悲惨な経験をもう誰にも味わってほしくない、という思いを共有できたらと考えた」と話した。同館=095(814)0055。

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