拳銃強奪事件 地域の力で命と安全守れ

西日本新聞 オピニオン面

 相次ぐ交番襲撃事件に、警察は対策を強めていた。今回の犯行は、その想定を超える形で実行された。驚くほかはない。

 大阪府吹田市の交番で古瀬(こせ)鈴之佑(すずのすけ)巡査(26)=福岡県朝倉市出身=が刃物で刺されて拳銃が奪われた。強盗殺人未遂容疑で男(33)が逮捕されたが、容疑を否認しているという。

 昨年6月には富山市の交番で警察官が刺殺され、犯人は奪った拳銃で近くの小学校にいた警備員を射殺した。

 警察庁は全国の交番と駐在所の安全対策を強化するよう通達した。勤務は複数人で当たる、入り口にカウンターを置いて襲撃を防ぐ、などだ。

 ところが今回は、事前に公衆電話から空き巣被害があったと虚偽の110番があった。交番にいた警察官3人のうち2人が現場に急行し、続こうとした古瀬巡査が襲われた。防刃チョッキを着用していたが、包丁で胸などを深く刺された。拳銃は腰ベルトにつながれたひもの金具が外されて奪われた。

 府警は先月、拳銃が強奪されにくい新型のホルスター(拳銃入れ)の配備を始めたが、全員には行き渡らず、巡査が着けていたのは旧式だったという。強奪後、5発の銃弾のうち1発が発射されたとみられている。

 事件には周到な計画性がうかがえる。全容解明とともに、適正な拳銃所持者でなければ発砲できなくするような、拳銃使用者の本人認証機能の強化など、さらなる対策が急務だ。

 今回注目したいのは、警察と自治体の早め早めの情報公表だ。現場は私鉄沿線の住宅街だった。府警が、登録者数約24万5千人の防犯メールで事件を一報したのは、発生1時間半後の午前7時すぎだ。同8時半すぎに自治体の防災無線が、戸締まり徹底などの呼び掛けを始めた。

 特に功を奏したのが、同11時半ごろに、防犯カメラに写った「不審な男」の画像公開に踏み切った判断だ。「息子に似ている」との連絡が入り、容疑者特定につながった。この段階での画像公開には人権上、最大限の配慮が求められる。それでも人命と地域の安全を守ることを優先した決断は適切だった。

 昨年8月に府警富田林署から勾留中の男が逃走した際は、情報開示が後手に回り逮捕まで1カ月半を要し、強い批判を受けていた。今回は、公表された情報が携帯電話などを通じ瞬く間に広がった。学校の部活動中断などが次々に決まり、保護者らも連絡に協力した。

 不測の事態に地域が適切に対処するには、受けた情報の的確な活用が欠かせない。災害時の緊急対応法も参考に、「地域の安全力」をさらに高めたい。

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