緊急避妊薬 服用までに「関門」多く オンライン処方 条件付き解禁 厚労省検討会

西日本新聞 くらし面

 性暴力や避妊の失敗による望まない妊娠を避けるために服用する緊急避妊薬について、厚生労働省の有識者検討会は10日、スマートフォンなどを使った「オンライン診療」での処方を条件付きで認めると決めた。7月にも国の指針を改定する。近くに医療機関がなかったり、心理的に不安定で受診が難しかったりする場合は、初診でも対面診療なしで処方箋を受け取れるようになる。

 緊急避妊薬は、性交から72時間以内に服用することで、8割程度の確率で妊娠を防ぐ効果がある。現行の指針は、初診は対面診療が原則のため、入手するには医療機関に足を運ぶ必要があった。だが、受診をためらう女性がいることやネットで違法な売買が横行していることから、検討会でオンライン診療の解禁について議論してきた。

 改定案では、医療機関を受診しにくい「地理的要因」がある場合と、性暴力被害者支援センターなど女性の健康や性被害の相談機関に関わる医師が「心理的な状態から対面診療が困難」と判断した場合、初診からオンライン診療を受けられるようにする。処方は産婦人科医と厚労省指定の研修を受けた医師に限定する。転売防止のため、薬は1錠のみの院外処方で、薬剤師の前で服用する必要がある。妊娠を防げたか確認するため、3週間後に対面で受診することも条件とする。

 一方で厚労省は「地域の医療機関での対面診療が原則だ」と説明。緊急避妊薬へのアクセスを改善するため、今後は処方している医療機関や研修を受けた医師についてもリスト化し、ホームページで公表する予定だ。6月24日までパブリックコメント(意見公募)を実施し、7月中の指針改定を目指す。

 ●医師会などが慎重意見、要件厳格に

 緊急避妊薬のオンライン診療での処方解禁を巡る議論が始まったのは今年1月。検討会で日本医師会など医療関係者から慎重な意見が相次ぎ、結局、服用までにさまざまな「関門」が設けられることになった。「最後のとりで」といわれる緊急避妊薬を必要としている全ての人が手に入れやすい環境には、ほど遠い。

 「婦人科の受診は、そもそも女性にとってハードルが高い。望まない妊娠をしたかもしれないとなると、なおさらだ。もっとハードルを低くしてほしい」

 NPO法人「ささえあい医療人権センターCOML」の山口育子理事長は5月末の検討会で訴えた。委員12人のうち唯一の女性。医療機関が近くにない場合や、性犯罪による対人恐怖がある場合に限って、オンライン診療を認めるとの厚生労働省案に対し、条件の緩和を求めた。

 厳格な条件の背景には医療者側の主張があった。「処方には高度な専門知識が必要で、フォローのためにも対面診療が必要」「悪用を防ぐため処方は1錠だけとし、目の前で服用してもらうべきだ」。オンライン診療が広がれば、地域医療体制が揺らぎかねないと懸念する声もあった。

 これに対し女性医療者らでつくる3団体は要望書を提出。緊急避妊薬が19カ国で市販され、76カ国で医師の処方箋がなくても薬剤師から購入できること、世界保健機関(WHO)が「思春期を含む全ての女性が安全に使用できる薬」として「医学的管理下におく必要はない」との見解を示していることなどを指摘した。

 最終的に検討会が今月10日に了承した改定案では、対面での受診を原則とした上で、オンライン診療については「地理的、心理的に対面診療が困難な場合」と厚労省案より対象を広げる形で決着した。

 「一歩前進した」。緊急避妊薬のアクセス改善を求めて署名活動をしてきたNPO法人「ピルコン」の染矢明日香理事長は、オンライン診療での処方解禁を歓迎する。一方で、専門機関への相談や薬剤師の目の前での服用など、女性にとって関門が多い。「緊急避妊薬は望まない妊娠のリスクがある全ての女性にとって最後のとりで。国には、正しい知識や情報の啓発にも力を入れてもらい、ゆくゆくは市販薬にしてほしい」と力を込める。

 ピルコンが5月に開いたイベントには、対面診療で緊急避妊薬を服用したことがある女子大学生が登場した。コンドームを使った避妊に失敗し、妊娠していないか不安な中、ネットで緊急避妊薬の存在を知った。病院で体験を打ち明けたところ、医師に叱られてつらかったと振り返り「薬局で買えたらどんなによかったか。全ての女性が平等に、自分の体を守るという当たり前のことができる社会になってほしい」と語った。

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