電動車椅子、電池は危険物? 航空会社「予備1個」国は「無制限」

西日本新聞 社会面

 電動車椅子の利用者が飛行機に乗ろうとしたら、「脚」となるバッテリーの預け入れを制限された‐。佐賀市の20代男性から、特命取材班に憤りの声が寄せられた。搭乗手続きの段階でいきなり知らされ、旅程の見直しを余儀なくされたという。国土交通省の基準に沿えばバッテリーは危険物扱いではないのに、なぜ制限されたのか。

 男性は生まれつき骨がもろい「骨形成不全症」を患い、電動車椅子で生活する。家族4人と大阪を1泊2日で旅行するため、5月初旬に福岡空港へ。全日空カウンターで電動車椅子に装備するバッテリー1個と予備2個を預けようとすると、係員から「1月から規則が変わり、予備は1個しか受託できない」と伝えられた。

 男性は過去に制限されたことはなく、旅行代理店にも個数を伝えていた。結局、予備1個は福岡空港に預けて大阪に向かった。主流の「ニッケル水素バッテリー」を使用し、3時間充電すれば1個で約15キロを走行できる。重たい充電器は旅行先には持っていかない。予備1個を失い、楽しみにしていた繁華街「新世界」行きなどを断念した。

 国交省に聞くと、担当者は「基本的にバッテリーの預け入れに個数制限はない」と説明。このバッテリーは熱を発する可能性はあるが、安全対策を取れば危険物扱いではないという。

 ただ、航空会社は国より厳しい安全基準を独自に設定できる。全日空は航空会社約290社が加盟する「国際航空運送協会(IATA)」の規定を採用。このバッテリーの預け入れは無制限だったが、1月から予備1個までに制限された。 

 全日空はホームページ(HP)で個数制限の変更を通知していなかった。男性の指摘を受け、5月13日にHPに掲載し、男性には文書で謝罪した。

 国際線を運航する全日空は「国際基準に合わせる必要があり、制限を変更するのは難しい」と説明。ただ「規定変更の理由はIATAに聞きたい」と話し、他社とも問題意識を共有するという。

 西九州大の滝口真教授(社会福祉学)は「電動車椅子のバッテリーは身体障害者にとって『脚』と同じ。安全基準を厳しくするあまり、利便性が置き去りにされている。変更した規定の周知も徹底するべきだった」と指摘した。

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