死別に寄り添う「カフェ」 筑前町いじめ自殺遺族の森さん 東京に開設

西日本新聞 一面

 家族やパートナーなど大切な人を亡くした人に寄り添い、支援する「グリーフ(悲しみ)サポート」に、長男をいじめによる自殺で亡くした森美加さん(49)=福岡県田川市出身=が取り組んでいる。約40年過ごした福岡を離れ、現在は東京で暮らす森さん。今も胸に抱える自身の喪失感や自責の念とも向き合いながら、歩みを進める。

 5月中旬の日曜日、東京タワー近くのマンションの一室。森さんと中高年の男性3人がテーブルを囲んだ。森さんが月に2回開催している「死別カフェ」だ。「外は晴れているけれど、心は曇り。亡くなった母のことが思い出されて…」。参加者の言葉に、森さんは静かにうなずいた。

 カフェでは、お茶やコーヒーを飲みながら、遺族が互いの気持ちを吐露する。遺族同士、通じる部分が少なからずある。「私自身、あの時に気持ちを吐き出せていたら、違っていたはず」。森さんはそう語る。

 2006年10月、福岡県筑前町に住んでいた森さんは、中学2年の長男啓祐さん=当時13歳=を自殺で亡くした。同級生によるいじめが原因だった。「お父さん お母さん こんなだめ息子でごめん」「いじめられて、もういきていけない」。学校だよりのわら半紙の裏に蛍光ペンで殴り書きのように記された遺書が見つかった。

 「息子に何があったのか。なぜ、死ななければならなかったのか」。真実を明らかにするため、夫婦で奔走した。二度と悲劇が繰り返されないようにと、各地での講演も引き受けるようになった。

 一方で「地域から孤立し、心と体の調和も保てていなかった」と当時を振り返る。無理に明るく振る舞い「苦しい」「悲しい」と声を上げられなかった。「残された子どもたちもいるんだから」「あなたがしっかりしないと」。周囲の言葉が胸に刺さった。

 09年、夫や子どもを置いて家を出た。「知り合いがいない場所なら、楽になれるかもしれない」。上京し、介護事業所でケアマネジャーとして働いた。自死遺族だという事実は周囲に明かさなかった。「自分は良い母親じゃなかったという思いがあった。自責の念は変わらなかった」

 グリーフサポートの存在を知り、参加したのが16年春。「悲しみを乗り越えるのではなく、折り合っていけば楽だという気持ちになれた」という。自分でも同じような境遇の人たちが集まれる場所をつくろうと、17年1月、東京都港区にNPO法人を設立。同年11月から知人のマンションで「死別カフェ」を始めた。

 これまでの参加者は延べ約200人を数える。「グリーフを抱える人たちが、無理せず地域で生きていけたらいい」。互いに寄り添い、支え合っていくつもりだ。

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 大切な人を自死で亡くした人が語り合う会は九州でも定期的に開かれている。2004年に立ち上がった福岡市中央区の市民ボランティア団体「リメンバー福岡 自死遺族の集い」が同市と共催する会は2カ月に1度開かれ、毎回約20人が参加。福岡県久留米市が主催する「自死遺族のつどい わかち合いの会」などもあり、大分県や熊本県でも開かれている。県や政令市の精神保健福祉センターが相談窓口になっている。

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