知恵比べ 悩める自治体 吉田 賢治

西日本新聞 オピニオン面

 ふるさと納税の新制度が今月、スタートした。九州各地の自治体に取材した本紙記事は「知恵比べが熱を帯びている」と伝えている。私が担当する福岡県大牟田市も先日、新制度を受けた取り組みについて記者会見を開くというので、期待を胸に出掛けた。

 知恵比べの最大の焦点は、その賛否はさておき返礼品だ。大牟田市の新たな目玉は、6万円の寄付者向けに用意した西鉄天神大牟田線を走る観光列車「ザ レールキッチン チクゴ」のペアチケット。待てよ。福岡県柳川市が既に採用していたはず。これでは目新しさも話題性も乏しい。大きく記事化するのは難しいなあと、正直に思った。

 大牟田市が2017年度に集めた寄付額は4145万円。福岡県筑後地区12市町で2番目の少なさだ。市民が他都市へ寄付した分や、返礼品の送料などを差し引いた実質利益は400万円にすぎなかったという。それでも一定額を稼がなければ、ふるさと納税としての収支はマイナスになってしまう現実がある。

 返礼品で人気があるのはブランド肉やフルーツだ。大牟田にもイチゴの「あまおう」はあるのだが、大量調達できない弱みがある。そこで昨年は「売れ筋」である市販のペットボトル飲料水に、市公式キャラクター「ジャー坊」コースターを付けて提供した。

 このアイデアは受け、市の返礼品では「あまおう」に次ぐ2番人気だった。ところが新制度では「主たる返礼品は地場産品」とのルールになり、ペットボトルの水は断念せざるを得なくなった。

 一時期の赤字からは脱却したが、今なお財政は厳しい。記者会見は途中から「寄付金で財政を潤せないか」と、報道各社の記者も一緒に考えを巡らせる流れになった。

 「プレミアム感や物語性がある品を」「化学工場が多い街なので工業製品は」「体験型の『コト消費』を増やしたら」-。大きな反響が期待できそうな返礼品は、なかなか具体的には出てこない。

 後日の定例市長会見でも話題に上った。中尾昌弘市長は「コト消費」の検討例として、刀匠が多い地の利を生かした「鍛冶体験」や、動物福祉の取り組みで注目を集める市動物園の「飼育員体験」などを挙げた。が、「多数の受け入れは難しいですよね」と、頭をかいた。

 税金を自治体同士が奪い合う仕組みへの批判はあるが、制度がある以上、市町村はいや応なく競争に駆り立てられる。お金が絡む知恵比べ。悩める自治体は、大牟田以外にも多かろうと容易に想像がつく。 (大牟田支局長)

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