「生きているだけで大正解」 「仕事人間」病を機に講演50回

西日本新聞 社会面

大病を機に「家族の大切さ」を伝え続けている寺本涼一さん 拡大

大病を機に「家族の大切さ」を伝え続けている寺本涼一さん

 生きているだけで大正解! 熊本市の司会業ベニー寺本こと寺本涼一さん(70)が、飾らない言葉で家族の大切さを伝える講演が多くの人の共感を集めている。家庭を顧みない「仕事人間」の日々を突き進んでいたさなかに大病したとき、家族が支えてくれた体験を基にしている。寺本さんは「人は幸せを求めて遠くを見がちだが、私のようにすぐそばにあるかもしれません」と語り掛ける。

 5月中旬、寺本さんは終活を考える高齢者ら約30人を前に地元で講演した。「きょう帰ったら、ぜひご主人、奥さん、家族を褒めてあげて。褒めるには、日頃からちゃんと見とかないかんよ」。話の中心は家族との関係。寺本さんが、妻(66)や子どもに嫌われていた経験を持つからだ。

 寺本さんは26歳で司会事務所を開業。平日は結婚式の打ち合わせや葬儀で流すナレーションの収録、土日祝日は司会の本番と、盆も正月もない生活だった。3人の子どもの入学式にも行かず、自宅で顔を合わせても言葉も交わさなかった。「父さんは何もせん」と嫌われていたのは知っていたが「一円でも多く稼ぐことが幸せで『俺のおかげで飯が食わるっとやろが』と、家族の気持ちなんて考えたことがなかった」。

 総勢5千組の結婚式の司会、2万人の葬儀の担当など多忙な日々は続き、61歳のとき、仕事中に倒れた。くも膜下出血だった。重篤な状態で病院に搬送され、10時間に及ぶ手術を受けた。数日後、集中治療室で意識が戻ると、枕元で家族が大声で泣いていた。それから7カ月間の入院生活では「刺激があった方がいいから」と、妻が毎日おしゃれをして会いに来てくれた。

 退院時、「医者としては言ってはいけないことですが」と執刀医から声を掛けられた。「寺本さんのような病状から、ほとんどまひも残らず復帰する例を知らない。もし神や仏がおられるとしたら、まだやる事があるということだろう。どうかしっかり生きてください」。奇跡的な回復をこう表現し送り出してくれた。

 医師の言葉が、家族関係の再構築と講演を始めるきっかけになった。

 自身にとっての幸せは「支えてくれた家族が笑顔で、子どもや孫が気軽に遊びに来てくれること」に変わった。会話も増え、長男(25)とは「彼女できたか」と気軽に話せるようになった。「自分がいるだけで笑顔になってくれる家族や友人のためにも、みんながきょうも元気でいてほしい。生きているだけで大正解」と寺本さん。

 2012年から始めた講演は50回を超えた。家族との時間を何よりも大切にしながら、全国で続けていく。

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