認知症高齢者が配達代行 顔知られ、徘徊時に利点も DM便、大牟田など

西日本新聞 一面

 宅配業者が介護事業所と連携し、配送の一部を認知症の人に担ってもらう取り組みが九州で始まっている。福岡県大牟田市と鹿児島県姶良市で、ヤマト運輸(東京)と介護事業所が実施。高齢者には手当が入り、配達時に地域で顔が知られるため徘徊(はいかい)したときに住民に気付いてもらえる一方、宅配業者はインターネット通販の拡大で業務が増す中、負担が減るなど両者に利点がある。認知症の人による代行配達は全国でも極めて珍しいという。

 ヤマト運輸は介護事業所と業務委託契約を結び、ドライバーがカタログなどの入った「クロネコDM便」を事業所に預け、これを高齢者が介護スタッフと一緒に届ける。1通当たりの業務委託料は大牟田市が23円、姶良市が25円で、全て手当として高齢者に入る。委託契約のため雇用関係は発生せず、最低賃金は適用されないという。

 大牟田市では、小規模多機能型居宅介護施設「てつお」が2月から、リハビリ特化型デイサービス「ライズ」が今月から配達。「てつお」には週1回、約20通のDM便が託され、認知機能に障害がある女性(89)が職員と徒歩で届ける。手当は月1500円ほど。「ライズ」では認知症の高齢者ら3人が担当。姶良市でも今年に入り、2事業所で認知症の高齢者が始めた。

 ヤマト運輸はこれまでDM便の配送について、主に障害者の福祉施設や作業所と業務委託契約を結んできたが、介護事業所との連携は初めて。宅配業界では、業務を受託したシルバー人材センターの高齢者が荷物を届ける試みがあるものの、認知症の人が担うのは例がないという。

 宅配便は全国的に取扱量が増え、ドライバーのなり手不足や長時間労働が課題に挙がる。国土交通省によると、留守宅への再配達率も昨年10月期、15・2%に上り、負担になっている。

 ヤマト運輸の担当者は「車が通りにくい集落などでは、ドライバーが歩いて配ることもある。お年寄りが代行してくれると省力化になり助かる」と説明。DM便は通常、郵便受けに入れるだけでいいが、「てつお」では顔見知りになるためできるだけ手渡すようにしている。同施設の管理者、浦幸寛さん(35)は「リハビリになるし、仕事にやりがいを感じているようだ」と話している。

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