嬉野温泉「バリアフリー観光」に本腰 高齢者や障がい者の入浴介助

西日本新聞 佐賀版

 日本三大美肌の湯と称される嬉野温泉で、旅行に訪れた高齢者や障がい者の入浴などを介助する「バリアフリー観光」が本格化している。福祉事業所のヘルパーや民間救急との連携を進め、超高齢化に対応した温泉地の在り方を模索している。28日にはバリアフリー観光推進全国フォーラムが嬉野市内で開かれる。

 せせらぎが聞こえる茶畑の中に立つ旅館「千湯楼(せんとうろう)」(嬉野市嬉野町)。おかみの柴田佳代子さんは10年前、一室をバリアフリー化した。入り口から寝室や浴室、トイレまで段差をなくし、手すりを各所に設置。間仕切りを最小限にして車いすでも移動しやすくした。徐々に客室の存在が知られ、柴田さんは「ようやくフル稼働を始めたところです」と言う。

 昨年秋には、民間救急事業「らかん」を展開する羅漢(福岡県糸島市)と連携し、「母娘で温泉旅行したい」という先天性の脳性まひで寝たきりの40代女性と母親を迎えた。

 女性は民間救急車で旅館に着くと、入浴から食事、排せつまで同行の看護師の介助を受けた。温泉につかると、とぼしかった表情がだんだんと満ち足り、にこやかになった。「温泉旅行はこんなに人を幸せにするのだと、あらためて気づかされました」と柴田さん。

 葬儀社の羅漢は6年前、消防の救急が対応できない退院時や転居時の長距離搬送などを開始。女性を迎えた「バリアフリー観光モニターツアー」を踏まえ、10月には介助付きのツアーを事業化する。徳久武洋社長は「多くの方の最期に立ち会い、生きている時に思いを実現するお手伝いをしたいという気持ちが募った」と話す。

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 嬉野市内には13旅館に全20室のバリアフリー客室がある。客層の中心は70~80代の高齢者を含む家族。施設だけでなく、ソフト面でのバリアの解消が求められる中、2007年に任意団体「佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター」(小原健史会長)が設立された。

 センターは観光客の介助の個別相談に応じ、福祉事業所のヘルパー派遣を仲介する。宿泊先も紹介する。介助費は宿泊料とは別で一律一万円。半額は市が負担する。

 バリアフリー観光について、国も2020年の東京オリンピックとパラリンピックに向けて本腰を入れ始めた。高度成長期は団体旅行中心の歓楽型観光だったが、バブル崩壊後は女性主導の個人・グループ旅行へ。くつろぎや癒やしを求める体験型観光から、さらに進もうとしている。

 小原会長は「嬉野観光も『満足』より『感動』や『幸福感』を提供する岐路に立った。超高齢化社会に対応した、誰もが楽しめる観光ビジネスに転換しなければいけない」と言う。

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 28日のフォーラムは午前10時から嬉野市嬉野町の市中央体育館で。NPO法人日本バリアフリー観光推進機構の主催。同機構の中村元・理事長などがバリアフリー観光の現状や課題などについて意見交換する。観光関係者による先進事例の発表もある。参加無料。佐賀嬉野バリアフリーツアーセンター=0954(42)5126。

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