脱サラし篠栗PRに奮闘 地域おこし協力隊員 溝口聖子さん

西日本新聞 ふくおか都市圏版

 20年以上勤めた地場大手企業を辞めて、篠栗町の地域おこし協力隊員として奮闘している女性がいる。溝口聖子さん(45)。4月から出身地でもない町に移り住み、与えられた任務の「女性が遊びに訪れる町のPR」に取り組んでいる。

 溝口さんは嘉麻市出身。専門学校卒業後、20歳で西部ガス(福岡市)に就職。主に企画畑を歩き、展示会開催やパンフレット作成などを担当した。3年前からは業務用ガス空調の提案営業で、病院や老健施設、保育園などを回っていた。

 仕事は充実し、やりがいも感じていたが、リタイア後に漠然とした不安もあった。「順調にキャリアを積んでも、いつかは定年退職する。収入も体力も見通せない中で、新しい生活に対応できるだろうか」‐

 そんなとき、地域おこし協力隊員の募集が目に留まった。「人間らしく、五感を生かすような暮らしをしたい」。腹は決まった。昨年4月、上司に気持ちを伝えたが、慰留された。周囲も心配してくれたが、決意は固く退社の意向を12月に正式に伝えた。最後は「頑張ってこい」と背中を押してもらえた。

 実は、篠栗町はお気に入りの町だった。数年前に森林セラピーを体験して以来、たびたび訪れては英気を養った場所。この春に住民になり、ますます好きになった。「時間の流れがゆっくりしていて、自分の部屋でお寺の鐘の音が聞こえるのもいい。お遍路も含めて、町では当たり前の風景が私には素晴らしかった」

 与えられた仕事である「女性が遊びに訪れる町のPR」には、まずは自ら体験しなければと、さまざまな場所を訪れている。お遍路88カ所巡りにも挑戦中で、写経にも取り組んだ。経験したことを、会員制交流サイト(SNS)「篠栗を歩こう」で発信。町観光協会のチラシを作ったり、飲食店情報などを掲載した町歩きマップを作成したりと、多忙な日々だ。

 住民になって、改めて気づいたこともある。「みんな、分かっとろうもん」という空気感。コミュニティーとしてはいいかもしれないが、町外から来た人は「不親切」と思うかもしれない。だからこそ、町出身者ではない自分の目線を大事にしている。「自分が分からないことは観光客も分からない」との前提に立って調べ、体験する。それを繰り返すうちに、ぼやけていた町の輪郭が、自分の中で少しずつクリアになっていく過程が楽しいという。

 「たとえば山の緑といっても、いろんな種類の林や木があり、こけがある。お寺のお坊さんと身近に話せるぜいたくさは、京都では味わえない。こうしたことを、多くの人が体験できるプランを作りたい」

 会社員時代と比べれば、収入は激減した。しかし後悔はない。元気いっぱいに町中を駆け回り、未知との遭遇を楽しんでいる。

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ