【特派員オンライン】静けさが意味するものは

西日本新聞 国際面

 「10年前のことは知っている。でも心配しないで」。プレスセンターにいたタイ政府の担当者は記者にほほ笑んだ。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の関連会合が20日、バンコクで始まった。議長国のタイは前回議長を務めた2009年の会議で屈辱を味わった。多数の反政府派が会場に乱入し会議が中止に追い込まれたのだ。だが今回、会議場の周辺こそ通行規制がかかっているものの商業施設やオフィス街は普段通り。デモも起きていない。

 14年の軍事クーデターから続く軍政は間もなく終わり、民政に復帰する。反軍政派はこれまでデモを行ってきたが、いずれも小規模で混乱も少ない。対立する政党の支持者同士が衝突するなど激しい政争が続いたタイの“伝統”を考えると、最近の静けさは正直、拍子抜けする。

 地元メディアは連日、香港の「逃亡犯条例」改正を巡る大規模デモを大きく報じている。反軍政派関係者に聞くと、一様に「香港はすごい」と熱を帯びる。タイ人記者いわく「タイ人はおとなしくなったんじゃない。じっと力をためているんだ」。静けさの奥に“民意のマグマ”は潜んでいるだろうか。 (バンコク・川合秀紀)

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