戸籍閲覧、DV配慮に差 法務省「指示」、自治体に浸透せず

西日本新聞 社会面

昨年3月の本紙報道を受け、インターネット上で戸籍謄本の運用を改めるよう求める呼び掛けが行われた(写真の一部を加工しています) 拡大

昨年3月の本紙報道を受け、インターネット上で戸籍謄本の運用を改めるよう求める呼び掛けが行われた(写真の一部を加工しています)

 ドメスティックバイオレンス(DV)被害者らの戸籍謄本を安易に交付しないよう福岡市が運用を改めた背景には、法務省が3月末に各地方法務局に出したメールがある。戸籍法に基づき交付を拒否できるケースについて整理。「戸籍から住所を探索されかねない」との訴えが被害者からあれば、自治体は慎重に対応できるようになった。ただ、メールは事務連絡にとどまっており、自治体の対応に差が生じている。

 戸籍法は、直系の血のつながりがある者は理由なく請求できるとする一方、自治体は「不当な目的」の請求を拒めると定める。実際には直系血族の請求で理由を尋ねることはなく、「『殺しに行きたい』とでも言われない限り拒めなかった」(福岡市の担当者)。

 特命取材班は昨年3月、「DV 知られる恐怖 子の戸籍閲覧、加害者も可能」と報道。その後、運用改善を求める署名活動がインターネット上で広がった。

 立憲民主党の山内康一衆院議員の質問主意書に対し、安倍内閣は今年2月、「(加害者に交付しないでほしいという被害者の申し出は)請求を拒むか否かを判断するに当たって考慮される事情の一つになり得る」との答弁書を閣議決定。法務省はこれを受け、3月29日付で地方法務局宛てにメールを送った。

 法務省によると、メールの内容は「DVなどの被害者から戸籍を通して居住地を探索されかねないとの相談を受けたことにより、加害者からの請求に『不当な目的』があるとの疑義が生じる。自治体から法務局に照会があった際は交付の可否を慎重に検討して指示するように」というもの。

 直系血族であっても被害者からの事前の申し出があれば「不当な目的に当たる疑義が生じる」ため、自治体は慎重な対応が取れるようになったというわけだ。

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 問題は、メールの内容が自治体側に十分周知されていない点だ。

 特命取材班が九州7県の政令市や県庁所在地の担当者に聞いたところ、把握していたのはメールが転送されてきた熊本市と、担当者会議で口頭説明があったという鹿児島市のみ。福岡市は被害者から相談を受けて法務局に問い合わせ、初めて知ったという。

 メールには各市町村に通知するようには記されておらず、法務局の判断が分かれたとみられる。法務省の担当者は「交付の判断をする市町村に内容が伝わらないと意味がない。法務局は当然、市町村に内容を流すものと想定していた」と話した。

 対応も割れている。熊本市は法務局と相談し、「被害者の本籍地と居住地が近い場合には法務局の判断を仰ぐ」よう運用を変更。鹿児島市は「他都市の事例を見て検討する」という。

 立命館大の二宮周平教授(家族法)は「メールによる連絡にした点で法務省のDV対応の認識が不十分。推奨例として福岡市の対応を示し、自治体に再度通知すべきだ」と話した。

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