消えない銀行とは 井崎 圭

西日本新聞 オピニオン面

 「銀行の機能は必要だが、今の銀行は消えて無くなる」。マイクロソフトの創業者、ビル・ゲイツ氏が1994年に、将来の銀行業界を予測した言葉だ。IT技術の進化で新たな金融システムが構築され、店舗を設置して営業に人間を使う従来型の銀行は無くなる、ということだろう。

 発言から四半世紀-。最近改めて、引用される機会が多い。福岡市で先日開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも、麻生太郎財務相が、この発言を紹介して「銀行なしに銀行機能が提供されることが可能になるかもしれない」と述べる場面があった。

 G20会議内のセミナーでは世界的IT企業グーグル(米国)のゼネラルマネジャー、シーザー・セングプタ氏が、銀行とIT企業は「ライバルではなくパートナー」と語る一方、「誰もがスマートフォンを持つ時代。若者は銀行は古過ぎると思っている」と刺激的な発言をした。

 指摘は間違っていない。全国で銀行店舗窓口への来店者は激減している。私の取材先である九州の地方銀行でも、来店者は直近10年で3割超減ったという。振り込みなど多くの手続きがスマホでできるようになり、若い人を中心に銀行に足を運ばないのだ。裏を返せば、地銀もIT技術を取り入れ、時代に遅れまいと奮闘している証拠だろう。

 銀行業界は今、転換期を迎えている。IT企業など他業種の参入に加え、日銀のマイナス金利政策による収益低下、人口減に伴う融資先減少などでも苦境に立つ。人員や店舗の削減などで経営効率化を図りつつ、信託業務など新たな収益源を確保しようと模索している。「安定の職場」と言われた銀行に、かつてないほどの逆風が吹いている。

 では、九州の従来型の金融機関は消えて無くなるのか。そうは思わない。

 地銀の強さは、多くの顧客(地場経営者)との接点、長い歴史を通じて築き上げた信頼だろう。ある地銀幹部は「信頼関係の深い融資先については、家族構成、それぞれの年齢、ペットの名前まで分かっている」と話していた。

 地域でのきめ細かい情報、ネットワークを基に、企業の真の実力を見極める銀行員の“目利き力”があれば、新たなビジネス展開のシーズ(種)は見つかるはずだ。

 それには、新規参入業者がコストとみなす「人」や「店舗」(拠点)が、やはり必要なのだ。地域を“深掘り”する力量にこそ、「消えて無くならない」従来型地銀の将来像がある気がしている。 (経済部)

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