福祉事業所「売る喜び」実感 小郡市の「まごころマルシェ」始動

西日本新聞 筑後版

「いかがですかー」。朗らかに客を呼びこむ「天心園パン工房panne」の販売ブース 拡大

「いかがですかー」。朗らかに客を呼びこむ「天心園パン工房panne」の販売ブース

まごころマルシェでも人気だった「つみにっかー」などの木製玩具 「kataru」のアクセサリー。繊細なデザイン一つ一つが手編みだ 「ヴィオラ」での作業。穴を一定の深さで削れるよう、ドリルの先に器具が取り付けられている

 福岡県は、障害のある人が作る製品などを「まごころ製品」と名付け、百貨店で大規模販売会を開くなどPRに努めている。販路の拡大で工賃向上につなげる狙いがある。そうした中、小郡市では今年、市内の福祉事業所や特別支援学校などが集まって販売会を開く「小郡・まごころマルシェ」が始まった。取り組みの効果や事業所の現状を探った。

 今月15日、イオン小郡ショッピングセンター(同市大保)で市内8カ所の事業所がブースを並べた。新鮮な野菜、焼きたてパン、手織り布を使った雑貨など、それぞれの得意分野を生かした多彩な品々だ。

 「いかがでしょうか」。就労支援継続B型事業所「天心園パン工房panne」のブースでは、通所者が売り子になって客に呼び掛けた。「普段工房で売る時よりお客さんが数倍多い」と職員。100円均一と手頃なパンは開店1時間強で売り切れ目前となり、急きょパンを追加した。

 「すごい、これ手作りですか?」。客が感嘆していたのは就労継続支援A型事業所「kataru」のブース。細い糸を編み上げた美しいアクセサリーが並ぶ。「ここでしか買えないものを作っている」という職員は「事業所は市内にあっても、これまで市民にあまり手にとってもらう機会がなかった。こういう場はありがたい」と話す。

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 マルシェは今年2月に初回を開き、今回2回目。事務局を務める市障害者生活支援センター「サポネットおごおり」の古賀敏幸センター長によると、事業所の勉強会の場で「イオンで売ってみたい」との提案があった。イオン小郡の協力を得て初めて開いてみると売れ行きも良く、各事業所から「どんな品を作っているか互いに知り、参考になった」と好評だったという。

 「障害者自身もよく利用する場で、自分で売る喜びを実感できる。その喜びがモチベーションにもつながれば」と古賀さん。販路拡大の効果は顕著で、各種イベントへの販売ブース出店依頼も増えた。

 マルシェで市関係者の目に留まり、ふるさと納税の返礼品に採用された事業所も2カ所ある。その一つ、NPO法人らいふステージ(同市三沢)が運営する就労継続支援B型事業所「ヴィオラ」で作られる積み木「つみにっかー」は、不規則な多面体で積むのにコツがいる。知育玩具として注文が相次ぐヒット返礼品になった。

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 事業所側も模索が続く。商品の品質を追求するために、通所者が携わる作業が限られてしまえば、福祉事業所としての役割を十分に果たせない。ヴィオラでは障害者が安全に無理なく作業ができるよう、木材を固定する台や、一定の深さで止まるドリルなど工具に工夫を凝らした。当初は障害者の作業はやすりがけなどにとどまっていたが、今は8割を手掛けるようになった。「できる作業が広がる喜びを感じてもらえなければ本末転倒」。木工班の担当職員木下哲広さん(53)は力を込める。

 さらに、販路もただ拡大すればいいわけではない。らいふステージは「猫の島」として知られる宗像市の相島の観光施設に猫のグッズを納入するなど、少しずつ販路が広がっているが、「忙しくなりすぎたら施設利用者の笑顔がなくなる。効率的に作られる既製品とは単純に比べられない」と営業活動などの担当職員岩田一生さん(34)は強調する。「手作りの良さ、作っている人の物語…どう伝えて、手にとってもらうかを模索している」

 「まごころ製品」は障害のある人の生産活動であると同時に、生活訓練や心身の安定にもつながらなくてはいけない。そうした背景も含め、気軽に知ることができる場が「まごころマルシェ」といえそうだ。今後も年2回のペースで続ける予定。サポネットおごおり=0942(72)3175。

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