出所後の支援、長崎の模索10年 更生保護施設「虹」ルポ

西日本新聞 社会面

 孤立や経済的困窮から犯罪を繰り返す「負の連鎖」を断ち切るため、長崎刑務所が全国に先駆けて「出所後」に目を向け、支援体制を拡充できたのは、南高愛隣会が運営する更生保護施設「雲仙・虹」の存在が大きい。開設10年を迎えた施設の日常を訪ねた。

 「こんにちは!」。島原半島の山間部にある虹の施設に入ると、大きな声が耳に届いた。ソファで和やかに歓談していたのは3人の男性入所者。廊下にまで笑い声が響き渡る。

 虹は全国で唯一、社会福祉法人が運営する更生保護施設として2009年4月に開所。刑務所を出た後の行き場のない高齢者や知的障害者らを10年間で約280人受け入れてきた。

 定員は20人。現在は20~70代の18人が規則正しい集団生活を送りながら、法人内外の作業所や近隣の企業で就労体験を重ねたり、グループホームなどでの生活訓練に出向いたりして、地域での生活に徐々に慣れるよう支援を受けている。

 更生保護施設で過ごせるのは原則6カ月間。虹では保護司や介護福祉士を含むスタッフ6人が、元受刑者が福祉施設を含む移行先で穏やかに過ごせるよう、個別の支援計画をつくり、生い立ちもさまざまな一人一人と丁寧に向き合っているという。あいさつや言葉遣いなどの基本的な生活マナーのほか、コミュニケーションの指導も行う。

 少額の窃盗を繰り返し、5度目となる刑務所暮らしから仮出所中の70代男性は、就業を通じて賃金も得た。虹の前田康弘施設長(63)から「入所以来、日中活動や生活面で大変頑張っている。他の利用者の模範」とたたえる「努力賞」の表彰状を贈られ、再出発への自信を深めた。「多くの人にお世話になり、恩を返すためにも二度と犯罪はしない」。老人ホームに移れないか思案中だという。

 虹は「元受刑者を社会につなぐ懸け橋」の役割を担っているが、入所中でも、何が悪いか理解できずに罪を犯したり、賃金を得た日に失踪したりする人もいて、この10年は試行錯誤の日々だったという。前田施設長は「虹を離れた後、犯罪に手を染めそうになっても、虹の相談相手を思い出して踏みとどまれるような信頼関係を築くことを目指している」と話した。

PR

PR

注目のテーマ