【DCの街角から】世界最強チームの苦悩

西日本新聞 夕刊

タイ戦に大勝した後、試合の合間にテレビ出演し、ワールドカップへの意気込みを語る米国女子代表選手たち(中央と右から2人目)=FOXテレビの画面から 拡大

タイ戦に大勝した後、試合の合間にテレビ出演し、ワールドカップへの意気込みを語る米国女子代表選手たち(中央と右から2人目)=FOXテレビの画面から

 米国で盛んなスポーツと言えばアメリカンフットボールや野球、バスケットボールなどが定番だが、サッカー人気もすっかり定着したようだ。

 週末にたまに体を動かしに行く公共の多目的グラウンドでは、よく子どもたちがサッカーをしている。先日、出会ったある町の幹部は、野球場やサッカー場など町の施設を案内しながら「サッカーなんて昔は誰もプレーしなかったのに…」と、その浸透ぶりに舌を巻いていた。

 中でも女子サッカーは「世界最強」とも称される代表チームを擁しているだけあって、注目度が高い。フランスで開催中の女子ワールドカップ(W杯)でも、連覇を目指して順当に決勝トーナメント進出を決めた。

 ところが初戦のタイ戦を13‐0で圧勝すると、あまりの強さに「13点も取る必要があったのか」「得点のたびに選手が派手に喜ぶのはスポーツマンシップに反する」といった指摘が国内外から噴出。米国の元代表選手らが「ゴールしてもあまり喜ばず淡々とプレーを続ける方が相手への侮辱だ」と反論するなど、ちょっとした騒ぎになった。

 チームが強ければ強いほど、「アンチ」も増えるのは世の常なのかもしれない。だが、昨今の米国は、トランプ大統領が「米国至上主義」を振りかざして「米国は強い」とアピールし、時に「尊敬しろ」と言わんばかりのふてぶてしい態度を見せる。そんな社会情勢も、女子代表チームへの風当たりを強くする要因になっているのではないか、とすら感じてしまう。

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 思わぬ騒動に巻き込まれた格好の選手たちだが、彼女たちにひるむ様子はない。特に今大会前、女子代表選手たちは、W杯や五輪での成績が劣る男子代表より自分たちの報酬が低いのは差別だとして、米国サッカー連盟を提訴した。今回の女子W杯に限らず昨年の男子W杯でも、試合のテレビ中継の解説者を女性が担当することが少なくないなど米国サッカー界での女性の地位は一見、高いように映る。だが実際は男女間の格差や不平等は根深いとして「何が何でも優勝して社会に訴えかける」と気合が入っているのだそうだ。

 主力選手はW杯への米国民の関心をもっと高めたいのか、試合のない日にはおしゃれな格好でテレビ番組に出演するなど、スタジアム外でのアピールにも余念がない。

 「女子スポーツ選手は良い成績を残しても報酬などで過小評価される。選手たちはそんな状況を変えようと悩みながら戦っている」。娘が女子サッカーチームに所属している知人の米国人男性が女子サッカー代表の心境を説明してくれた。W杯連覇だけでなく女性の地位向上も懸けた戦いに、しばらく注目が集まりそうだ。 (田中伸幸)

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