「命の教育」模索続く 事件の教訓踏まえ15年 佐世保・大久保小

西日本新聞 長崎・佐世保版

 教室で児童が同級生に殺害される事件が起きてから15年。佐世保市の大久保小は教職員、保護者、地域の住民が手を携えて児童を育む取り組みを重ねてきた。命の尊さをどう伝えるか。子どもの心の変化に、周りの大人がどれだけ気付くことができるか。ゴールなき模索が続く。 

 「夢に向かってせいいっぱい生きる」「友達と笑いあう」「1年生としっかり遊ぶ」。6年生22人が「命を輝かせる方法」を考え、星形の紙に書いて黒板に貼る‐。

 大久保小は14日、道徳の授業を公開した。この日を含む1週間は学校が常時開放され、多くの保護者や住民が訪れた。

 校内には、日頃から先生以外の大人が当たり前にいる。「こころんルーム」と呼ばれる教室には月に数回ボランティアが訪れ、児童と対話する。ゲームを一緒に楽しむこともある。

 水曜の朝、算数の問題を解くチャレンジタイムでは住民が教諭と並んで低学年の採点をする。茶道や俳句作り、スポーツチャンバラをする放課後子ども教室もボランティアが支える。

 校外の「先生」は25人。佐藤正実校長は「子どもにとって、さまざまな人とのつながりを持つ機会になっている」と感じている。住民、保護者、教職員が集まる学校支援会議は年7回。児童の校外での様子も共有し、指導に役立てている。

 「事件を起こしてしまったという意識が地域住民にもあった。学校に住民がゲストティーチャーとして入り、児童も校外で活動する形が両方からできた」。事件後に校長を務めた三島智彰さん(65)は振り返る。

 児童を見守りながら一緒に登校して10年目になる校区住民の西田稔さん(75)も「子どもたちを地域で見守るという意識、形ができている」と自負している。

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 学校でも事件の教訓が根付いている。はさみや刃物は担任が一括管理し、空き教室は施錠を徹底する。事件が起きた給食時間には、一つの教室で複数の教職員が昼食を取り、児童との接点を絶やさない。児童の情報を共有する月曜の会議には全職員が出席する。

 今月から教職員が事件を再認識する取り組みも始めた。市教育委員会や文部科学省がまとめた報告書を基に校長、教頭が教職員と個別に面談する。事件を風化させないためだ。

 教育の質の面ではコミュニケーション能力の向上に努める。話す、聞く、関わり合うの3項目の目標を設定した表を全教室に掲示。普段の授業から児童に「返事をする」「うなずく」などを意識するように促す。

 一連の成果は文科省の全国学力・学習状況調査に表れている。

 市教委は「自分(児童)に良いところがあるか」や学校と地域の関わりなど、心の教育に関する12項目の調査結果を重視する。昨年度の大久保小の数値は児童9項目と教職員3項目の全てで全国平均を上回った。例年、市内トップの水準を保っているという。

 それでも佐藤校長は「全然安心していない。昨年のデータは関係ない」と受け止めている。

 「子どもを取り巻く状況は変わる。変化を生き抜く子どもたちを育てるため、学校も社会も子どもたちとどう向き合うかを常に考えていきたい」

 佐世保市では事件をきっかけにした教育の見直しを大久保小以外の小中学校も実践している。教職員による児童や生徒の情報共有、地域住民と協力した学校運営は広く定着している。

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