【日日是好日】満月を眺めて志を新たに 羅漢寺住職 太田英華

西日本新聞 大分・日田玖珠版

 新緑のすがすがしい5月の末、指月庵庭園で野だて茶会を行いました。爽やかな空気を味わい一服を楽しんでいただくために企画いたしました。

 かつて羅漢寺には、「指月庵」と称す中津藩主小笠原長勝公によって建てられた茅葺数寄屋造りの茶室がありました。残念ながら昭和18年の大火災により焼失してしまったのですが、現在は庭園となった茶室跡地には、礎石や蹲(つくばい)、水屋の面影が今でも確認できます。

 今回の茶会に伴って羅漢寺のお茶会を研究することを目的に「茶道研究会」を立ち上げ、第1回野だて茶会に向けて企画準備をしてきました。その中でも大きな試みが、「指月庵」跡地に8畳間の茶室を造ることでした。

 もちろん仮設ですが、8枚の畳を土台からきちんとしつらえ毛氈(もうせん)を敷き、床の間に見立てて赤い大傘を置きました。竹でびょうぶをアレンジし水屋と茶室を区切り、暑さ対策で急きょ作った屋根は、木々の枝から枝に貼ったロープに布を張りました。

 見事に空間を演出した新しい姿の茶室が、約100年ぶりに私たちの前に現れました。茶道研究会会員の中には、この茶会の為に新たに茶道をたしなむようになった人もあり、裏千家の先生のご指導で、当日お点前を披露するまで上達しました。会員の熱意は菓子職人さんにも伝わり、禅文化を意識した「静寂」と題する特別なお菓子も出来上がりました。

 今回お招きした50人の皆さんに羅漢寺を堪能し、素晴らしい時間を過ごしていただくために、会員が一致団結しおもてなしに徹しました。茶会は皆さんの好評を博し、その時間を共有した誰もが感動し大成功に終わりました。

 仏教では、月は仏の教えの仏法を示すと考えられております。「指月」は月を指す指の事であり、仏法を指し示し、その方向を目指すということを意味しております。大事なことは月にたどり着くこと。すなわち悟りの境地に達することで、導く手段にとらわれ過ぎず月を見よという意味も「指月」には込められております。

 しかし、なぜ羅漢寺の茶室に「指月庵」と名付けたのでしょう。実は茶室があったこの場所からは、望月のころ、向かいの山間から見事な満月を眺めることができます。おもんぱかるに長勝公は、月を眺めるにふさわしい場所と判断され「指月庵」と称す茶室をこの地に造ったのでしょう。

 茶道は禅文化です。消えかけた文化や伝統、志を生き返らせ継承したい。まずはできることからやろう。それが一致団結しておもてなしに徹した、今回の野だて茶会でした。この原稿を書いている17日は満月です。古人(いにしえびと)が眺めたであろう同じ月が目の前にあります。月も仏法も不変です。

 「さあ、志を定めて行こう」。気合を入れ姿勢を正し、改めて不変の月を指さし、はるか向こうの月を仰ぎました。

【略歴】1967年、羅漢寺27世住職の娘として生まれる。高校卒業後、大学進学のため上京。20代半ばから40歳で出家するまでフラメンコダンサーとして活動。出家後、愛知県の尼僧専門修行道場で約5年間、僧堂修行し、2013年3月に帰山。現在、羅漢寺28世住職として寺を守る。

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