私のフェミニズム<上> 北原みのりさん 性差別に鈍感になった平成 女性たちもっと怒っていい

西日本新聞 くらし面

「フラワーデモは『おかしい』を表明できる場所」と話す北原みのりさん 拡大

「フラワーデモは『おかしい』を表明できる場所」と話す北原みのりさん

 性被害を訴える「#MeToo」や、女性の生きづらさを描いた韓国の小説が大きな反響を呼ぶなど、女性たちが自分の問題としてジェンダー(社会的性差)に向き合う動きが世界で広がっている。男女の対立というイメージが強かった「フェミニズム」は、今の時代に、どんな希望を与えるのか。性差別を巡る活動を展開する2人に、自身にとってのフェミニズムを聞いた。
 
 -性暴力とそれに関する司法判断への抗議を呼び掛け、4月11日に東京で「フラワーデモ」を開いた。デモは毎月11日、福岡など各地で開かれるようになり、女性たちの新しい動きとして注目されている。

 「きっかけは福岡地裁久留米支部の準強姦(ごうかん)事件の無罪判決。抵抗不能だと裁判所が認めたのに有罪にならないのはおかしいと感じた。その後『司法のジェンダー教育を』と発言すると、『感情的になるな』『#MeTooもいいけど人権もね』と法律家などから多くの批判を受けた」

 「性を暴力的に描いた本に尊厳が傷ついていると指摘すれば、表現の自由だと言い返され、性暴力に関する刑法改正を訴えれば、冤罪(えんざい)が増えると言われる。被害を受けている側がなぜここまで社会に気を配らなければならないのか。フラワーデモは、おかしいことをおかしいと言ってたたかれる空気そのものに声を上げたいと思った」

 -実際にやってみてどうだったか。

 「この状況にいてもたってもいられず駆けつけたという点は皆が同じだった。さまざまな性差別や性被害に耐えてきたが、性暴力を巡る無罪判決が続いたことで、ついにコップの水があふれた、という感じだ」

 「声を上げれば仲間がいることも実感できる。いろいろなツールで誰もが発信できる時代。誰かの発信が風穴となり、現状にそぐわない法律や制度を変えるきっかけにもなり得る」

 -就活生へのセクハラ、女子大生を性行為の対象として比較する週刊誌企画など、最近も性差別を巡る問題が相次いだ。

 「日本は平成の30年、性差別に対し鈍さを深めた気がする。テレビではいまだに男性メインキャスターのアシスタントを女性が務める番組が多く、性別役割分業がはびこっている。差別に慣らされ、諦め、鈍感にならざるを得ない。東京医科大の不正入試問題には特に憤った。フェアであるべき受験で、女というだけで落とされる。しかも『女性は辞めるから』というとんでもない理由で」

 -東大入学式での上野千鶴子名誉教授の祝辞が話題になった。フェミニズムを「弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」と表現した。

 「その表現には強烈な違和感を持った。私は、フェミニズムは怒りや痛みを伴った社会変革の思想だと思う。弱者が弱者のままでいなければならない構造こそが問題。それを変えていこうとすることが大事で、それがフェミニズムだと考える」

 「フェミニズムというか、社会を変えようとする女性たちとの出会いは、女子高生コンクリート詰め殺人事件(1988年)などの女性への性暴力をテーマにした集いだった。当時、被害者の落ち度を指摘するような声もあり、その中に性暴力を支える空気のようなものを感じていた。でも研究者や評論家など女性たちがすごく怒っていて、怒っていいんだ、自分の感情を疑わなくてもいいんだと感じた」

 -政治の分野では、候補者の男女均等を促す「政治分野の男女共同参画推進法」が昨年施行され、今年4月には初めての統一地方選があった。来月には参院選も見込まれる。

 「女性候補者がいることが、政党のリベラル度をアピールする材料にされている気がする。女性候補者のイメージ戦略には、新人風の明るさ、爽やかさ、汚れの無さが前面に押し出されている場合もあり、違和感を抱く。男の脅威にならない女性がいいのかとつっこみたくなる」

 -女性向けのセックスグッズを扱うショップを経営している。

 「2000年代に売れていたのは“男性を喜ばせる”ことを前提にした商品ばかり。女性の性を肯定するには、男性の快楽ありきなのかと疑問を持ち、私の店では扱わなかった。最近は若い世代を中心に女性の性を楽しむことが肯定されてきた。大事にしているのは性の主体性と尊厳と自由を守ること。これを脅かすのが性暴力。全部つながっている」 

 ▼きたはら・みのり 1970年、神奈川県生まれ。作家。女性向けのセックスグッズショップの代表。著書に「毒婦。」「さよなら、韓流」など。

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