「褒める授業」子どもに自信 別府教育事務所長の山香さん 新たな自分発見

西日本新聞 大分・日田玖珠版

武蔵東小で「褒める授業」を行う山香昭さん(左)。友達から「褒め言葉カード」を受け取った児童たちは一様にうれしそうな表情をみせていた 拡大

武蔵東小で「褒める授業」を行う山香昭さん(左)。友達から「褒め言葉カード」を受け取った児童たちは一様にうれしそうな表情をみせていた

 褒めることが子どもの心をほぐし、やがて自信につながる‐。別府市の県別府教育事務所長の山香昭さん(55)は中学の教育現場で、褒める授業に取り組んできた。褒められることで子どもは新たな自分を発見し、自立して強くなり、褒める言葉が拡散すると周囲も自分も明るくなれると訴える。山香さんが信じる「幸せの方程式」は、社会でも少なからずパワーを発揮し始めている。

■「褒め言葉」交換

 国東市立武蔵東小で5月、山香さんを招いた授業があった。「これからゲームをします」と、配ったのは「素直」などと褒め言葉が書かれたカード。5年生30人は友人に当てはまるカードを選び、それを本人に渡した。その後、児童はそれぞれ、もらったカードの言葉や「人から言われたい言葉」をプリントに書き込んだ。児童は思わぬ評価に照れるなどしていたが、誰もが一様に楽しそうな様子。山香さんは黒板に書いた「相手の良さを発見し伝えよう」を指し示しながら、「友達をしっかり見ていれば必ず良いところが見つかる。来年の終了式にはそんな言葉であふれるクラスにしよう」と呼び掛けた。

■学習意欲が向上

 山香さんは3年前、中津市の中学校長に就任した。当時学校には落ち着きのない生徒が少なくなかった。そこで、数年前にテレビ番組で取り上げられていた北九州市の小学校教諭の授業を思い出し、それをヒントに「褒める授業」に取り組んだ。

 髪を赤く染めた生徒は他の誰よりも、障害のある同級生の面倒を見ていた。そこを褒めると、生徒は自分の価値に気付き始め、変わり始めたという。学級で浮いていた女子生徒に対しては、「うるさい同級生」は「元気がいい同級生」、「にらむ生徒」は「自分に関心がある生徒」などと発想の転換を勧めた。次第に女子生徒の表情は柔和になり、バレンタインデーにはクラスメート全員にチョコレートをプレゼントするまでになった。褒めることが習慣になった同中では学級の絆が深くなり、学習意欲も向上したという。

■鏡を意識し笑う

 「嫌いな人にも良いところはある。それを見つけて、その人に対する考えを変える。『過去』と『他人』は変えられません。でも『自分』と『未来』は変えられる」と山香さん。自ら変わることが難題を切り開くチャンスを呼び寄せると強調する。

 学校だけではない。部下との世代間ギャップに戸惑う上司、好景気の実感がないまま家計をやりくりする主婦などにも褒める視点は大切という。仕事を辞めて認知症の母を介護する女性は当初、意思疎通できない母を叱ってばかりいた。しかし母の暴言を肯定し、良い部分を語り掛け始めると、次第に母の症状が落ち着いたという。

 人に会うときは、鏡に写った自分を意識する山香さん。「そこに仏頂面が写っていると相手も仏頂面になる。だからまず先に笑うんです。すると相手も笑うようになりますよ」。山香さんのシンプルな考え方は、ややこしい昨今の人間関係を解きほぐすヒントになりそうだ。

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