小学教科担任制 多くの条件整備が必要だ

西日本新聞 オピニオン面

 高校の段階まで学校で行う初等中等教育の在り方について、文部科学相が時代に即した見直しを中教審に諮問した。近く特別部会で議論が始まる。専門教員が複数のクラスを受け持つ「教科担任制」の小学校高学年への導入が検討課題の柱だ。

 専門的指導力の強化や学級担任の負担軽減が主な狙いという。理科や音楽など一部で導入例はあるが、依然として、全教科を学級担任が教えるやり方が小学校の授業の基本である。

 教科担任制が広がれば、小学5、6年生の「学びの風景」が一変するだけではない。小学校と中学校の授業方法の差が小さくなるため、それぞれで異なる教員免許の見直しが議論される。小中一貫教育の推進さえ検討対象になりかねない。

 来年から「主体的・対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領が実施される。小学校高学年での英語教科化やプログラミングの必修化なども始まる。ただでさえ多忙な教員の負担がさらに増えるのは確実だ。

 学級担任制では、教員は全教科の授業準備が求められる。教科担任制が広がれば、そうした教員の負担が軽減される可能性はある。高学年になれば学習内容は高度になる。専門教員が授業を担当することで、内容が充実し、きめ細かい指導が実現するとすれば、児童にとっても歓迎すべきことだ。

 ただし、導入するとなれば事前に整理すべき課題は多い。

 九州の中山間地などには、過疎化と少子化が相まって児童数が少ない小学校は珍しくない。教員配置が少ない小規模校に各教科の専門教員を配置できるのか。教科担任制を普及させるには、大学の教員養成課程の在り方を見直す必要もあろう。

 教育現場には、他の教科と関連付けた横断的な授業がやりにくくなるという指摘がある。

 授業ごとに教員が変わるので、いじめなどに悩む子どもの変化を見過ごしてしまう懸念もある。スクールカウンセラーらとの緊密な連携で情報共有を徹底する必要性は高まるだろう。

 無論、教科担任制を導入しても、教員の多忙が抜本的に解消するわけではない。教員が担っている多様な業務の整理・削減や労務時間管理の徹底などを進めることが肝要だ。学習内容の拡大や高度化に伴い、教員配置の充実も検討すべきだ。

 諮問の内容は、より専門性の高い学科を目指す高校普通科改革や、外国人の子どもに対する教育支援の在り方など多岐にわたる。すべての児童生徒が段階的に心身の成長と学力向上を遂げていけるよう、中教審には現場の声も踏まえた丁寧かつ骨太の議論を求めたい。

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