【暮らしの現場 参院選佐賀】(3)新幹線 特急減便で疲弊懸念

西日本新聞 佐賀版

特急が減便されるJR肥前鹿島駅。利便性が低くなって地域への影響が懸念されている 拡大

特急が減便されるJR肥前鹿島駅。利便性が低くなって地域への影響が懸念されている

 人影はまばらだった。鹿島市の玄関口、JR長崎線肥前鹿島駅のホーム。同市で食品会社を経営する男性(50)は、午前10時53分発の博多行き「かもめ」を待っていた。

 男性は月に4、5回、出張で特急を利用する。だが、2022年度に九州新幹線西九州(長崎)ルートの武雄温泉‐長崎間が開業すれば、並行する長崎線は現在上下合わせて1日53本の特急が4分の1近くの14本と大幅に減る。

 「博多まで今は特急で約1時間だが、減便されれば普通列車ばかりで乗り継ぎが増え、30分以上長く時間がかかる」と男性は嘆く。

 長崎ルートを巡っては、与党検討委員会と佐賀、長崎県との間で新鳥栖‐武雄温泉の整備方法を巡って激しい綱引きが続く。政権与党・自民党は、参院選の公約に新鳥栖‐武雄温泉の「早期着工を目指す」と記しているが、長崎線沿線をフォローする記述はない。

 「肥前鹿島駅が不便になるなら、車で30分はかかるが武雄温泉駅から特急に乗って博多に行くしかないのかも」。自らの生活に関係のない新幹線開業の陰で、新たな負担が強いられることに男性の顔は浮かない。

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 特急減便が地域経済に与える大きな影響も懸念される。

 鹿島市の祐徳稲荷神社は近年、訪日外国人観光客(インバウンド)が急増している。しかし、JRの利便性低下はブームに水を差しかねない。

 神社そばの祐徳門前商店街で、土産物店「大祐」を一人で切り盛りする大隈直代さん(86)は特急減便の計画に「せっかく増えつつある外国人個人客が不便になれば、商売と生活を脅かす」と憤る。

 開業35年、全体的に売り上げが減少傾向にある中、外国人客の存在は数少ない希望だ。観光バスで訪れる団体客と違い、特急を使う外国人個人客は大きなキャリーバッグを引いているケースが多く、店で預かることも増えている。だが、交通網が弱くなれば死活問題になりかねない。

 「(建設に)大金を使ってわずかな時短効果しかない長崎新幹線は佐賀にはいらん。あれはおかしか」

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 「長崎線沿線にどう人を集めるか、前を向いてやるしかない」

 鹿島市の肥前浜駅を拠点とするNPO法人「肥前浜宿水とまちなみの会」の中村雄一郎事務局長(70)は現実を受け止めながら、地域の活性化を目指す。

 同会は駅近くの酒蔵通りを訪れるツアー客のガイドを務めるほか、ビール列車を企画し誘客を図る。昨年度に案内した客は6500人。年々増えており、人気スポットになりつつある。新幹線開業後も知恵や工夫で沿線の武雄温泉や嬉野温泉から観光客を引き込む覚悟だ。

 ただ、新鳥栖‐武雄温泉を巡る国や与党などの議論には苦言もある。「これ以上、長崎線のような並行在来線の区間を作ってほしくない。私たちと同じ苦い思いをする地域を増やすのはやめてほしい」

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