日中首脳、打算の接近 参院選へ得点稼ぎ 対米交渉見据え秋波

西日本新聞 総合面

 安倍晋三首相と中国の習近平国家主席の首脳会談が27日、日本でようやく実現した。安倍氏は会談後、習氏を招いて夕食会を催し、日中関係の改善を演出した。米国との貿易戦争を背景に日本へ接近する習氏と、参院選で外交成果をアピールしたい安倍氏。両首脳の笑顔の裏にはそれぞれの思惑がにじんだ。

 「来年の桜の咲く頃に、習近平主席を国賓として日本にお迎えしたい」。大阪市のホテルで開かれた日中首脳会談。安倍氏が呼び掛けると、習氏は「来春の訪問はいいアイデアですね」と穏やかな表情で応じた。

 中国国家主席の来日は9年ぶり。終始友好ムードに包まれた会談は2012年の沖縄県・尖閣諸島の国有化で悪化した日中関係が「正常な軌道に戻った」(安倍氏)ことを印象付けた。

 習氏が意識するのは安倍氏の背後にいるトランプ米大統領だ。日米の同盟関係は強固だが「日本のように中国と協力しても米国から横やりは入らない」と他国へアピールする狙いがある。貿易問題など米国への対応に集中するため、他国との関係をこじらせたくない事情もある。

 「米国の同盟国である日本が完全に中国側に付くことはないが、引きつけておく意味は大きい」と日中外交筋は指摘する。

 日中両政府は当初、20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)に合わせた国賓待遇での習氏の来日を模索していたが、安倍政権は新天皇即位後、最初の国賓をトランプ氏と決め、中国側にはG20とは別に国賓での来日を打診。中国の最高指導者が短期間で2回、日本を訪れるのは異例だが、習氏は来春の訪問に応じる考えを示し、対日重視の姿勢を鮮明にした。

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 安倍氏にとっても日中関係の改善は外交得点になる。期待するのが北朝鮮の拉致問題解決に向けた中国の後押しだ。習氏は20、21日に国家主席として初めて訪朝し、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と会談。この日の日中会談で「日朝関係に関する安倍首相の考えを正恩氏に伝えた」と明かした。安倍氏は「習氏の強い支持」を追い風に正恩氏との日朝首脳会談を実現し、拉致問題を進展させたい考えだ。

 ただ、米中対立が長引く中、日本が果たせる役割は限定的との見方は多い。米中の仲裁役を期待する声もあるが「“けんかの仲裁”は当事者より力のある国でないとできない。日本には荷が重い」と政府関係者は認める。尖閣諸島を巡る対立など日中の懸案は先送りされたままで、米中関係が好転すれば中国が日本と距離を置くとの指摘もある。

 日本政府は習氏の来日を前に、人権問題で中国を刺激しないよう配慮する姿勢が目立った。香港の大規模デモについて菅義偉官房長官は「大きな関心を持って注視している」と語ったが、デモへの明確な支持は回避。連帯の意思を示した米英などとの違いを浮き彫りにした。今月4日に発生から30年を迎えた天安門事件についても批判は抑制気味だった。

 日本側の説明によると、安倍氏は習氏との会談で「自由で開かれた香港の繁栄」や「自由、人権尊重、法の支配といった普遍的価値」の重要性を指摘したが、どこまで踏み込んで改善を求めたかは不明だ。 (伊藤完司、北京・川原田健雄)

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