諫干「非開門」司法が道筋 最高裁初判断 混迷22年、解決見通せず

西日本新聞 総合面

 国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)の潮受け堤防排水門を巡る訴訟で、最高裁が「非開門」と初めて判断した意味は大きい。1997年の堤防閉め切り以来、20年以上にわたって地域を分断してきた問題について、司法が一つの「結論」を出したといえる。開門を求めてきた漁業者側は徹底抗戦の構えを崩さないが、専門家からは、関連訴訟の判断が今後「非開門」に傾くとの見方が出ている。

 開門を巡る一連の訴訟は、相反する司法判断が続いてきた。2010年12月に開門を命じた福岡高裁判決が確定。一方、堤防閉め切りでできた干拓地の営農者側が起こした訴訟では、13年11月に長崎地裁が国に開門差し止めを命じる仮処分を出し、「ねじれ」が生じた。

 その後は非開門の判断が続く。15年9月、佐賀、長崎県の別の漁業者が開門を求めた訴訟では福岡高裁が請求を棄却。17年4月に開門差し止めを命じた長崎地裁判決を受けた国は控訴せず、開門せずに問題解決を図る方針を明確化した。

 和解協議で国は、開門の代替策として有明海再生のための総額100億円の基金創設を提案したが、漁業者側から激しい反発を受け、破談に終わった。

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 同じ排水門なのに開門、非開門と司法判断が割れてきたのは、それぞれの裁判は異なる原告が起こした別の訴訟であるためだ。「非開門」の最高裁判断が確定しても、違う当事者が開門を求めて提訴することはできる。

 漁業者側の馬奈木昭雄弁護団長は「われわれは屈服しない。開門を求める漁業者は増えていくし、問題は収まらないということを最高裁に示す」と強調する。長崎地裁では別の漁業者による開門請求訴訟が係争中。干拓地の営農者の中にも、開門を求めて訴訟を起こしている人がいる。

 とはいえ、今回の最高裁決定の影響は大きい。成蹊大法科大学院の武田真一郎教授(行政法)は「最高裁が開門しないとの判断を示した以上、地裁や高裁の裁判官は今後、それに沿う判断を示す可能性が高い」とみる。

 漁業者にとって「頼みの綱」であり続けてきた、開門命令確定判決も大きく揺らいでいる。

 国が漁業者側に開門を強制しないよう求めた「請求異議訴訟」で福岡高裁は昨年7月、国の訴えを認めた。確定判決の効力を事実上無力化する意味を持つ。最高裁は7月26日に上告審弁論を開くが、高裁の判断が踏襲されれば、漁業者側はさらに窮地に追い込まれることになる。

 これまで国は被告や原告の立場で訴訟に参加し、「行司役」としての司法に判断を委ねていた。その司法が一定の方向性を示し、それでも対立が解けない場合、最終的な解決はどこに求めればいいのか。

 横浜国立大大学院の宮沢俊昭教授(民法)は「最高裁判断が問題の終わりではない。話し合いの出発点と位置づけ、対立する利害関係を調整する場を設けることが必要だ。国も当事者意識を強く持ち、紛争状態からどう脱するかに知恵を絞っていく段階に入ったといえる」と話している。

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