突然の諫干「非開門」驚き 「なぜこの時期」「願いが届いた」

西日本新聞 社会面

 最高裁が初めて出した判断は「非開門」だった。諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門を巡り、福岡高裁の「開門命令」が確定してから9年近く、膠着(こうちゃく)状態が続いてきた開門問題。最高裁が導いた結論に、開門を求めてきた漁業者たちは「来月に(別の訴訟で)最高裁の弁論が開かれるのにどうして…」と絶句した。対する営農者側からは安堵(あんど)の声が漏れた。

 「驚いた。まさか、このタイミングで最高裁がこんな判断を示すとは」。開門請求訴訟の原告団長、松永秀則さん(65)=長崎県諫早市=は肩を落とした。

 病院からの帰宅途中、報道陣からの連絡で最高裁の決定を知った。国が漁業者側に潮受け堤防排水門の開門を強制しないよう求めた請求異議訴訟で、最高裁は7月26日に弁論を予定。それまでは判断を示さないと思っていた。

 諫早湾で16歳から漁師を続ける。かつての主力だった高級二枚貝タイラギは排水門の閉め切り後、ほぼ姿を消した。今はアサリの養殖などで生計を立てる。

 松永さんが所属する小長井町漁協の組合員は開門派と非開門派に分かれ、対立。27日午前に定期総会があり、出席者からは「このまま漁を続けられるのか」と不安の声も上がっていた。

 開門、非開門。異なる確定判決。松永さんは「もう司法では解決できない。政治が決着をつけるしかない。これからも開門を求めて声を上げていく」と語気を強めた。

 佐賀県太良町の県有明海漁協大浦支所の漁業者たちからも憤りの声が上がった。「ねじれはそのまま。裁判所はそれを放置するのか」。原告の大鋸武浩さん(49)は怒りをあらわにした。今はクチゾコ漁に出ても漁獲はなく、貝類は姿を見ないという。

 同じく原告の平方宣清さん(66)は「国家権力と闘う弱い立場の人が司法からこういう仕打ちを受けたら、あとはどこに頼ればいいのか」。出口の見えない苦悩に表情をゆがめた。

 一方、開門に反対してきた営農者からは決定を評価する声が相次いだ。「これでようやく私たちはゆっくり農作物に向き合うことができるのかな」。干拓地営農者でつくる平成諫早湾干拓土地改良区の山開博俊理事長(71)はほっとした表情をみせた。

 開門に反対する住民らでつくる諫早湾防災干拓事業推進連絡本部の栗林英雄本部長(85)は「とてもありがたいニュース。私たちの願いが認められた」と評価。「開門問題は一刻も早く解決しなければならない。営農者と漁業者がいかに共存共栄できるかが大事で、今後もじっくり考えていきたい」と語った。

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