謎のADHDシール 天神や博多駅の電柱など貼付 誰が?意図は?

西日本新聞 夕刊 坂本 信博 金沢 皓介

 福岡市中心部の天神や博多駅周辺のあちこちに、「ADHD」という文字と脳のイラストが描かれたシールが貼られている-。LINE(ライン)を通じ、そんな情報が特命取材班に寄せられた。ADHDとは注意欠陥多動性障害の略称だが、誰がどんな意図で作り、貼ったのか。

 「謎のシール」は電柱や標識の裏など約10カ所で確認できた。複数の種類があり、脳がずれて重なったようなイラストや文字が描かれている。ADHDにちなんでなのか、「ALL DAY HAPPY DAYS」と記されたものもあった。

 ADHDは発達障害の一つ。脳機能の障害が原因とされ、集中力が続かなかったり、じっとするのが苦手で思いつきで行動したりするといった症状がある。

 取材班はインターネット上でシールを5枚1200円で販売するホームページを見つけ、販売する男性と会うことができた。

 福岡県を拠点に活動するアーティスト、shikisoと名乗った30代の男性は、困惑の表情を浮かべた。「シールを作ったが、貼ったのは自分ではありません」

 男性は今年初めごろから、同じデザインのTシャツなどの販売を始め、2月ごろからイベントでシールを配布したり、ネットで販売したりするようになった。

 なぜADHDと表記したのか。以前、勤めていた会社を辞めて落ち込んでいた時に、友人から「ADHDではないか」と指摘され、確かに、症状が自分にもあてはまると思ったからだという。

 「障害を全て悪く考えるのではなく、毎日好きなことをやり、自信を持って楽しく生きたい」。あえてADHDの文字を中心に、かっこいいと考えるデザインを描いた。男性は「障害をちゃかすつもりも、自分の意見を押し付けるつもりもありません」と語る。

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 ADHDの当事者や支援者の意見は分かれる。

 福岡県内で成人のADHD当事者の自助グループを主宰する男性(54)は「どんな意図かは分からないが、嫌だと思う人もいる。ADHDという言葉が独り歩きするのではないか。シールが生きづらさを抱える当事者の気持ちを折らなければいいが」と懸念する。

 一方、ADHDを公言する名古屋市の男性歯科医師(29)は「かっこいい」と評価する。shikiso氏がデザインした洋服やシールを購入し、パソコンにシールを貼っている。「ADHDの症状は人によって違うが、当事者は障害者というネガティブな価値観を抱いてしまいがちだ」と指摘。「公共物に貼るのは良くないが、使い方によっては、ポジティブな文化として社会に問題提起するきっかけになるかもしれない」と話した。

 ただ、信号機や電柱などにシールを貼る行為は福岡市屋外広告物条例違反となり、100万円以下の罰金が科される。shikiso氏も「常識の範囲内で使ってほしい」と呼び掛けている。

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