幾日も降る雨を「霖雨(りんう)」という…

西日本新聞 オピニオン面

 幾日も降る雨を「霖雨(りんう)」という。中国の古典「荘子」に<霖雨すること十日、子輿(しよ)いわく、子桑(しそう)はほとんど病まんと>の一節が。雨が10日も続いたので、貧しい子桑は病気になっているだろうと、友人の子輿が心配する

▼古来、長雨は暮らしに大きな影響を及ぼした。とりわけ、貧困や病気に苦しむ弱い人々には。別の史書には<淫雨(いんう)あり、稼(か)を傷つく>とある。「淫雨」も長く降り続く雨のこと。長雨で穀物に被害が出たという記録だ

▼九州北部がようやく梅雨入り。平年より21日遅く、1951年の統計開始以降、最も遅いという。この時季に雨が少なく、飲み水や生活・農業用水の不足が心配されていた。干天の慈雨はありがたい

▼ただし、と思うのは、甚大な被害を招いた昨年の西日本豪雨や一昨年の九州豪雨の痛ましい記憶が、生々しくよみがえるからだ。山が崩れ、川が氾濫し、家や田畑が流された。傷痕は今も残る

▼たとえ梅雨の期間が短くても、猛威が和らぐとは限らない。ことしの梅雨は台風を伴ってやって来た。近年は、集中豪雨やゲリラ豪雨といった恐ろしげな用語もよく耳にする

▼<二十日ばかりもジメジメと降り続いた天気が、七月の十二日に成って漸(ようや)く晴れた。霖雨(ながあめ)の後の日光は殊にきらめいた>。島崎藤村が随筆集「千曲川のスケッチ」で描いた晴れやかな季節を迎えるために、霖雨や豪雨に警戒したい「つゆのあとさき」である。

PR

PR

注目のテーマ