潜伏キリシタン 遺産登録1年 受け継ぐ信者、関心の高まりに喜びも

西日本新聞 夕刊

 「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されてから30日で1年。関連遺産にはならず登録には至らなかったが、キリシタンの信仰と文化を深く受け継ぐ長崎市下黒崎町でも、その歴史に触れようと多くの人が足を運ぶ。同町でかくれキリシタンの7代目「帳方(ちょうかた)」(責任者)を務める村上茂則さん(69)を訪ね、この1年について話を聞いた。

 小高い山に囲まれた黒崎地区には信者約50人が静かに生活している。キリシタン神社の一つ、枯松神社があることで知られる。

 世界遺産のほか、故遠藤周作氏の小説「沈黙」の映画化の影響もあり、夏休みの自由研究や卒業論文のテーマに選んだ若者らが全国各地から訪れ、村上さん自ら案内することも多くなった。村上さんは「宗教弾圧の歴史に苦しんだ先祖やキリシタンたちもきっと喜んでいるのでは」と話し、キリシタン文化への関心の高まりを素直に受け入れている。

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 村上さんは生後3日で幼児洗礼を受け、禁教期の教えを代々受け継いできた。毎晩オラショ(祈り)を唱え、信徒行事を記した「バスチャン暦」という信仰暦に従って暮らす。遺産登録とは関係なく続けられる、さりげない日常生活の大切な時間だ。

 マリア観音像やメダル、ロザリオの数々-。父から子へ、そして孫へと代々受け継がれてきた「ご神体」を手にすると「ちょっとした傷痕から、伝え聞いた禁教下の苦しみを感じる」と漏らした。「信仰の自由が認められている今が、いかに幸せな時代かを再認識する」。この1年を振り返って、村上さんが最も伝えたかった言葉ではないだろうか、とても重たく響いた。

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 これからの課題もある。信者の高齢化に伴う継承の難しさだ。村上さんは「この1年、私たちの文化や生活が報道され、興味を示す人も多い。たとえ信者の数は先細りしようとも、信仰は形を変えて歴史に残る」と言い切った。

 取材を通じて出会った40代の女性は、オラショを間近に見て「信じることの尊さや命を懸けて守り続ける信仰の重さ。全てが興味深い」と話していた。

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