ゲーム依存、どうしたら?悩む当事者や家族 識者「『取り上げたら済む』は短絡的」

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ネットゲームの利用目的

読者から寄せられた感想や意見 福岡県立大准教授 四戸智昭さん 東京大大学院教授 橋元良明さん

 今月のテーマは「ゲーム依存、どうしたら?」。本紙くらし面で「リアルはどこに-ゲーム依存を考える」(5月8~15日、全5回)を連載したところ、インターネットニュースにも配信され、全国から90通を超えるメールやはがきが届きました。「うちの子の話かと思った」「私も依存症では」「大人になってからのめり込む人も」…。当事者や親、支援者らの声に耳を傾け、解決に向けたヒントを探りたいと思います。

 ●逃げ場所として最適/正当に評価され快感

 男子高校生(18)=兵庫県 ゲームの世界では結果を正当に評価し、たたえてくれる。この快感が病みつきになった。親はエリート志向。良い成績でも褒めてくれなかった。最難関の中高一貫校に入学したが、平日の朝4時までゲームをして成績が落ち、不登校を経て最寄りの高校に転校した。受験生の今もゲームを断ち切れない。世間で青春と呼ばれる時期、自分に残ったのはゲームだけ。勉強しなくても生きていけるという当時の考えを後悔している。親には幼い頃から褒め、ゲームより面白い物を与えてほしかった。

 自営業 ゲームは逃げ場所として最適だった。人間関係は匿名で離れたいと思えばすぐ離れられる。とにかくストレスがない。一つのゲームに2000時間は費やした。リーマンショックの後で仕事がうまくいかず、家族関係も崩れ、ただ時間があった。でも「毒をもって毒を制す」という考えで、やめるために他のゲームを複数始めた。一つに集中できなくなり、仮想空間で成し遂げる心地よさが鈍って現実に目を向けられた。今もゲームはするが、ほどほど。あの頃に戻りたくないので。

 女性(33) ゲーマーは長時間の作業が得意で、プレーヤーが楽しめる仕組みも思い付く。その人の長所を生かせる仕事を一緒に見つけてあげてほしい。ゲーマーの私の兄は、これまで仕事やアルバイトが数カ月しか続かなかった。急にきっちりし始め、聞けばゲーム会社に勤めていると言う。生き生きし、もう5年以上続いている。私もゲーム会社に勤めて3年。仕事も趣味もゲームです。

 ●「様子見る」余裕ない/「まずい」本人も自覚

 会社員女性(48)=名古屋市 見守っていたら本人が道を切り開くこともある。息子が高校生の頃、部活を辞め、ゲームで昼夜逆転していた時期があった。夏休みも一人。見ていてつらかったが、あまりうるさく言わないようにしたら、海外のゲーム仲間と単語帳片手にやりとりするうちに英語の成績が上がり、得意科目になった。受験勉強をして外国語大に合格。今はバイトに恋愛に充実した時間を送っているようだ。

 自営業女性(42)=佐賀県 小学5年の息子が「友達もやってるから」とどんどんはまり、いつの間にか依存状態に。没収すると、床に転がって「できないなら死ぬ」と暴れた。1カ月たったけど、時間を持て余すと大声を出し床に転がる。「様子を見て」と人は言うけど、本人が理解するまで待つ余裕がない。依存は子どもにも起こっていると知ってほしい。

 主婦(40代)=広島県 ゲーム漬けの高校生の息子に注意すると「俺にはゲームしか居場所がない」と吐き捨てる。力が強く、けんかもできない。初めはルールを決めていたけど、楽しくなると守らない。自分で考えて調整する力を育てられなかったのは、親の責任かもしれない。

 会社員男性(50代)=横浜市 次男は高校で荒れて停学処分になり、そのまま不登校に。深夜にゲームをし、暴れるので家の壁は穴だらけ。心理トレーニングの専門機関にかかり、自らの問題に気付かせるところから始めた。次男も「このままじゃまずい」と感じていた。通信制サポート校に転校してゲーム時間が減り、大学に合格。成功体験で自信が付いたようだ。今は息抜きで楽しむ程度。

 主婦(36)=茨城県 生活が厳しいのに、夫は課金までしている。仕事と寝る時間以外はずっとゲームをして、夕飯に呼んでも来ない。妊娠していて、将来のために貯金したいのにできない。「離婚したら」と思われるかもしれないが、頼れる親戚がいない。夫がいない間に泣いている。

 ●救えぬ側も苦しい/親の心配 過剰では

 中学校教諭=新潟県 昨年、生徒の一人がゲームのしすぎで学校に来なくなった。発達障害の疑いもあり、医療機関につなげようとしたが失敗した。生徒は「大きな悩みはないが、休み始めて行きづらくなった」と話した。保護者と協力して向き合おうとしたが、突然転校してしまった。新しい学校も登校せずにゲームを続けていると聞いている。救えず苦しい。教師の指導も行き詰まっている。

 会社員男性(28)=東京都 僕らの世代にとって、ゲームは遊びの必需品。現実逃避するほど没頭する子がいても不思議ではない。ゲームが原因で学校を辞めたというと新しい問題に見えるが、根本原因は、ヤンキーになって社会から外れてしまっていた昔の子どもと同じ。ゲーム依存はいろんな人に迷惑を掛けたり、法を犯したりする心配がないだけいいんじゃないか。親は過剰に心配せず、さまざまな道を提案して本人に任せてみてはどうか。

 ●「自分を褒める」経験を 福岡県立大准教授(嗜癖行動学) 四戸智昭さん

 依存は、孤独や寂しさ、不安を和らげるために物や人、行為にのめり込む「自己治療的な行動」だ。仕事やスポーツへの過度なのめり込みもあり、善悪の一面のみで捉えるべきでない。

 ゲーム障害が病気とされるようになった背景には、昼夜逆転や引きこもりを「社会から逸脱する」と恐れて解決策を求めた親たちのニーズがある。社会の合意に基づいて病名を付け、医療で対処することを社会学で「医療化」と呼ぶ。

 1990年代以降、商店街や井戸端会議が消え、知恵を出し合う場が失われた。医療が孤立した家族の受け皿になっているが、特効薬はなく、診断を受けたら解決するものでもない。

 生きるための依存で、「ゲームを取り上げたら済む」との考えは短絡的。精神状態が悪化する。本人が生き方を見直し、負の感情に対処する手段を持たなければ、別のものに依存する。家事でもボランティアでもゲーム以外で「私ってえらい」と自分を褒められることを見つけよう。家族も足りない点に目を向けず、良さや頑張りを見つけて積極的に褒めてあげてほしい。

 ●一緒に遊び ルール作り 東京大大学院教授(社会心理学) 橋元良明さん

 スマートフォンの急速な普及で誰もがネットに手軽にアクセスできる時代。2018年の調査では0歳児の約35%がスマホを使用しており、ますますネット依存の増加、低年齢化が進むと予想される。ゲーム依存も深刻化が懸念される。

 同じようにゲームをしても、依存になる人とならない人がいる。依存傾向のある人は、抑うつや孤独感が強い状態にあり、ゲームを「ストレスや苦痛から逃れるため」「日々の悩みや不安を忘れるため」など現実逃避的に利用している人が多い。現実世界で問題やストレスに直面することで抑うつ的な傾向に陥り、そこから逃げるためゲームにのめり込んでしまっている。

 依存から脱却するには買い物や外食、運動、他の趣味などゲーム以外に関心を持ち、気分転換を図ることが重要だ。進学や就職、引っ越しなど環境の変化が脱却につながることも多い。

 親が注意すると「知らないくせに」と逆上したり、隠れてゲームしたりと逆効果になることも。一緒になって遊びながら、利用時間の制限などルールを作っていく方法が有効だ。

 ▼ゲーム依存 ゲームの時間や頻度などをコントロールできない▽日常生活でゲームを最優先▽問題が起きてもゲームを継続-という症状が1年以上続く状態。昼夜逆転や不登校、家族内暴力などで問題化することが多い。5月下旬に「ゲーム障害」として世界保健機関(WHO)が疾病認定した。厚生労働省が2018年8月に発表した調査では病的なインターネット依存が疑われる中高生は5年間で倍増し、推計93万人。全体の7人に1人に当たる。

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