【暮らしの現場 参院選佐賀】(5)外国人就労 共生への支援十分か

西日本新聞 佐賀版

 金属を溶接する手元から火花が飛び散る。梅雨の蒸し暑さが漂う神埼市千代田町の板金部品製造「シンエイメタルテック」の工場内で、技能実習生のフィリピン人は汗をぬぐった。

 「技術力があり貴重な戦力。日本人の若手社員の刺激になればいい」。田原和幸社長(63)は2004年から外国人材の受け入れを開始。従業員56人のうち20~30代のフィリピン人6人が技能実習生として働く。深刻な人材難を補ってくれる貴重な存在だ。

 通訳を雇い、敷地内に寮を建てて技能実習生の支援に力を入れるが、同社のような環境は当たり前ではない。田原社長は「外国人が集団で民間アパートを借りようとしても治安悪化やマナー違反を恐れ、断られるケースがある」と明かす。

 総務省行政評価局の調査では、日本で働く外国人と留学生の9割が生活環境の改善に「公的支援が必要」と回答した。技能実習生を巡っては過酷な労働環境や相次ぐ失踪が問題となるケースも少なくない。田原社長は「外国人材が増えようとしているのに、支援態勢や異文化への理解は進んでいない」と嘆く。

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 国は4月施行の改正入管難民法で新たな在留資格「特定技能」を創設。介護や建設など14業種が対象で、5年間で最大約34万5千人の受け入れを見込む。

 佐賀労働局によると、県内の外国人労働者数(昨年10月末時点)は、過去最多の5258人で5年前の2倍強。神埼市の不動産業者は「外国人向けに自転車で職場に通える距離にある安価な物件を探す雇い主が増えている」と話す。

 一方で、外国人労働者の消費活動は活発とは言い難い。佐賀市の電機部品メーカーで働くベトナム人の技能実習生(20)は家賃や光熱費などを差し引くと月の手取りは10万円ほど。節約のため自炊し、3キロ離れた職場に自転車で通い、手作り弁当を持参する。

 50代男性社長は「14業種以外でも就労が認められれば、優秀な実習生の活躍の場が広がる。彼らの懐が潤えば地域経済にも好影響を与えるはず」と指摘する。

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 文化や習慣の違いでトラブルになるケースもある。外国人の人口比率が1・6%で県内最高の鳥栖市。コンビニ店で働く60代女性は、近くの日本語学校生ら約20人が無料の公衆無線LAN「Wi‐Fi」を使おうと店に集まり、スマートフォンで母国に電話する光景に少し驚いた。

 客から「出入り口に外国人が集まり怖い」「話し声がうるさい」と苦情が寄せられ、女性が日本語学校に事情を話すと、外国人の姿は無くなったという。

 増え続ける外国人といかに共生を図るか。神埼市神埼町の岩田地区では昨年、住民が地区内に住むベトナム人の技能実習生ら約50人を盆踊りに招いた。公民館長の田代高規さん(67)は「お互いの顔が見える関係になるため、今後も交流を続けたい」と意欲的だ。

 国際交流に取り組む佐賀市のNPO法人「地球市民の会」の岩永清邦事務局長(35)は言う。「日本に来て文化の違いに戸惑う外国人は多い。誤解は偏見を生んでしまう。来日前の段階で日本の社会や習慣を学べる仕組みづくりに国は力を入れるべきだ」

 =おわり

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