トランプ氏、貿易成果求め揺さぶり 日米首脳会談 安保懐疑論に回帰

西日本新聞 国際面

 28日の日米首脳会談で、トランプ米大統領は安倍晋三首相を前に「軍事の議論をする」と発言したが、日米安全保障条約が不平等とする持論は控えたもようだ。ただ、来年の大統領選に向け、有権者にアピールできる外交成果が乏しい中、公約である日本との貿易不均衡是正では確実な成果を挙げたいのが実情。前回大統領選時に掲げた「安保不平等論」などの一方的な強硬論に原点回帰し、同盟国であろうと容赦なく譲歩を迫る狙いが透ける。

 「日米安保条約の見直しの議論は一切なかった」。会談後、日本政府高官は記者団にこう断言した。トランプ氏が26日に米メディアとの電話インタビューで条約に基づく日本に対する防衛義務は片務的と強く不満を表明。今回の会談で再び持論を展開するとの観測も出ていたが、高官は繰り返し、打ち消した。

 とはいえトランプ氏にしてみれば在日米軍駐留経費(思いやり予算)の日本側の負担増も含め、条約や同盟の在り方に疑問を呈する持論を堅持している姿勢を鮮明に印象づけた格好だ。

 非核化に関する米朝交渉に絡み「在韓米軍をいずれ撤退したい」とも発言するなど、東アジアの安全保障体制を揺るがしかねないトランプ氏の持論の裏側には米国民が抱く厭戦(えんせん)感がある。「世界の警察官」として米軍の海外派兵は続き、アフガニスタンなどで米兵の死亡は後を絶たない。

 軍事支出より「雇用増など好調な経済の維持」を期待する支持者の存在も大きい。トランプ氏は前回大統領選時、日本など同盟国が米国に守られながら経済発展したにもかかわらず、駐留米軍に関する軍事費を十分に負担していないと訴え、支持を得ていた。

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 大統領選が本格化する前に、トランプ氏としては外交成果を得たいところ。だが、中国との貿易摩擦や北朝鮮の核問題など多くの課題で明確な戦略を欠き、展望が開けない。特に米中貿易協議が長期化すれば、景気減速に直結しかねない。

 こうした中、日本がトランプ氏の標的となるのは「時間の問題」(日米外交筋)とささやかれていた。世界の首脳の中で「トランプ氏の最大の理解者」とも称される安倍首相が「困った時の頼みの綱」(同)とみられているからだ。

 ただ、対日貿易交渉で大幅な輸出増につなげたい農産品を巡って十分な譲歩を引き出せる保証はない。米通商筋から「日本は交渉の進め方が細かく容易ではない」との声も漏れ聞こえる。

 トランプ政権内では、日米安保の重要性を理解する同盟重視派が軒並み姿を消した。下火になっていた「安保懐疑論」を再浮上させ安全保障を盾に貿易問題で成果を迫る型破りの外交を展開する上で障壁は既になくなっている。

 トランプ氏は24日のツイッターでイラン情勢に絡み、ホルムズ海峡を通るタンカーで原油を輸入する日本に「船を自分で守るべきだ」とも主張。危機感をあおって相手を揺さぶるトランプ流の交渉術しか策がないのが実情だ。とはいえ、大統領選が近づくにつれて米国への一層の投資増や、思いやり予算の大幅負担増を日本へ実際に求めてくる可能性も否定できない。 (ワシントン田中伸幸、大阪・塩入雄一郎)

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