観光の「足」確保へ実験 五島市・久賀島で自家用車送迎サービス

西日本新聞 長崎・佐世保版

久賀島の旧五輪教会堂。昨年の世界文化遺産登録を機に観光客が増加している。 拡大

久賀島の旧五輪教会堂。昨年の世界文化遺産登録を機に観光客が増加している。

島民たちに配車アプリの使用方法などの説明をするアジットの担当者 スマートフォンのアプリの画面。乗車希望者の位置情報に応じ、近くのドライバーを案内してくれる

 世界文化遺産への登録で注目を浴びるようになった五島市・久賀島。外洋の東シナ海に面するため「離島」と言い表される五島のさらに周辺に位置する「二次離島」だ。キリシタンがひそかに信仰をつないだこの島を多くの人が訪れるが、ネックは「足」。4~5月に配車アプリベンチャーのアジット(東京)が島民の協力で実験した自家用車による送迎サービスに、解決のヒントがあった。

 久賀島は遠い。長崎からジェットホイルで1時間半、フェリーなら3時間かけて福江港へ。そこから定期船で20~30分。最大でも1日4便しかない。不便でもある。

 それでもこの島は多くの人を魅了する。海辺にたたずむ木造の旧五輪教会堂、険しい地形に切り開かれた田畑や集落は潜伏キリシタンたちの強い信仰心の表れ。教会を含む集落一帯が世界遺産の構成資産になっている。

 ただ、島の港から旧教会堂までの道のりも遠い。車で30分、さらに徒歩で約10分。この「車で30分」に問題が潜む。

 島にはタクシーとレンタカー会社が1社ずつしかなく、保有台数はタクシーが5台、レンタカーは3台。そこに観光客が押し寄せれば、車が足りないのは当たり前だ。世界遺産登録直後の昨年7~12月、旧五輪教会堂には前年同期の3倍に当たる1万1352人が訪れた。車の手配ができず、諦めた人も少なくないという。

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 実験はアジット、五島市、島のタクシー会社の3者が連携して行った。島を訪れる人たちに事前にアプリに登録してもらい、タクシーが出払っている場合、アプリを起動して出発地と目的地を指定してもらう。そうすると、「ドライバー登録」を済ませている島民に連絡が届き、最寄りのドライバーが駆け付ける仕組みだ。

 島を訪れた人はガソリンの実費をドライバーに支払う。「報酬」には当たらないため、法律には抵触しない。アプリの「システム利用料」を含め、港から教会堂の往復だと今回は千数百円程度。これに「謝礼」を加えて払ってもらう。

 期間中の利用は6件にとどまったが、アジットの担当者は「『島民ドライバーとの交流が楽しかった』といった声も寄せられた」と手応えを感じた様子。市商工雇用政策課は「島民の生きがいにもなる」と考える。

 島の足の問題は久賀島に限らない。一次離島の福江島でも5月の大型連休中はレンタカーの予約があふれ、観光客の受け入れに課題を残した。車やバイク62台を保有する市内のレンタカー会社「観光レンタカー」の瀬川豊巳代表(55)は「観光客が少ないオフシーズンを考えると、台数を増やすのは容易ではない」と打ち明ける。今回の取り組みは打開策として注目され、アジットは久賀島での本格導入を視野に実験結果の検証を進めている。

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