米中休戦 決着見通せず トランプ氏、国内事情優先 習氏、長期戦の構え

西日本新聞 総合面

 トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は29日、世界経済への深刻な打撃が懸念されている貿易戦争の「一時休戦」で合意した。米国が中国からのほぼ全ての輸入品に関税を課す制裁「第4弾」を発動する最悪の事態は当面、回避された。だが5月に暗礁に乗り上げた貿易協議を再開しても、米国が求める中国の構造改革などの対立点で双方が折り合えるかは不透明。このまま関係改善に向かうとみるのは早計だ。

 「われわれは元の軌道に戻った」。習氏との会談を終えたトランプ氏は貿易協議の再開を宣言し、貿易不均衡の是正につながる合意を中国に強く求める姿勢を改めてアピールした。

 しかし、「安全保障上の問題」を理由に禁輸措置を講じた中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)に対する米企業の部品販売を容認するなど、中国に譲歩をした感は否めない。

 その要因として考えられるのが、トランプ氏の支持層である農家の苦境だ。

 貿易戦争のあおりで大豆など米農産物の対中輸出は大幅に減少。しかも中西部などの主要農産地では今春以降、記録的な豪雨に伴う水害の多発で生産量の減少も懸念される。「収入が激減し、農機具のローンが払えない農家の破綻が続出している」(米政府関係者)。ホワイトハウスには、米中貿易摩擦の緩和を求める農業関係者からの苦情が後を絶たないという。

 トランプ氏はこの日の記者会見で、中国に米農産品の購入拡大リストを提示すると言及し「農家が最大の受益者になるだろう」と繰り返し強調してみせた。

 産業界からもファーウェイへの部品販売禁止に対する批判が上がるほか、衣類、靴といった身近な商品が対象となる対中制裁「第4弾」を実施すれば、消費者からの反発も避けられない。来年の大統領選再選をにらみ支持層の離反や、景気悪化に伴う株価の下落などを招きたくないという打算が働いたとみられる。

 ただ、トランプ氏の対中強硬姿勢そのものは有権者の評価が高い。目先の苦境を乗り切るための急場しのぎの対応や、中国への過度な妥協が続けば、逆に政権への批判を高めかねない危うさもはらむ。

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 トランプ氏との会談では硬い表情が目立った習氏だが、サミット閉幕時に各国首脳と握手を交わす際は笑顔ものぞかせた。「休戦」に胸をなで下ろしているのは間違いない。

 5月に米中貿易協議が中断したのは、中国側が合意案の大幅修正を求めたのがきっかけ。米側の主張に沿って譲歩すれば弱腰批判を受けかねず、習氏は難しい立場に立たされていた。香港で大規模デモが起こり、中国への批判が高まったことも想定外だった。

 打開の一手になったとみられるのが北朝鮮の核問題だ。中国メディアによると、習氏は会談で米朝首脳の対話を支持。「トランプ氏は朝鮮半島問題での中国の役割を重視し、中国と意思疎通する考えを示した」という。トランプ氏は会談後、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との対話に前向きな姿勢を示しており、習氏の仲介が功を奏した可能性がある。

 ただ、知的財産権侵害などを巡る米中の主張の隔たりは依然大きい。両国が相互に発動した第3弾までの制裁措置も残ったままだ。

 トランプ氏は米中間の「関税棚上げ」合意をたびたび破棄した過去があり、再び強硬姿勢に転じる恐れは消えない。習氏は休戦の間に中国経済の立て直しなどに力を入れ、長期戦に備える構えだ。 (ワシントン田中伸幸、北京・川原田健雄)

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