ハンセン病判決 家族への差別も断罪した

西日本新聞 オピニオン面

 強制隔離された患者本人でなく、その家族への差別を初めて認定し、国に損害賠償を命じた画期的な判決である。

 裏を返せば、ハンセン病に対する社会の偏見はそれほど根強く、むごかったと言えよう。

 ハンセン病家族訴訟で、熊本地裁が原告の家族561人のうち541人に、計3億7千万円を支払うよう命じた。判決は「国は、患者隔離政策により、家族が偏見差別を受ける社会構造をつくり、差別被害を発生させた」と断じた。

 患者だった本人への国家賠償は、隔離政策を違憲とした同地裁判決(2001年)が確定したのを受け、進められた。しかし、患者の家族がどんなに苦しい人生を歩んできたかは、16年の提訴に至るまで広く知られることはなかった。

 熊本市で1950年代、象徴的な事件が起きた。当時、患者の子どもは「未感染児童」と呼ばれ、特別に置かれた小学校分校に入れられた。そのうち数人が本校入学を認められると、本校児童の保護者が反対集会を開くなど地域は騒然となった。校門には差別的な言葉を連ねた張り紙が掲げられた。

 「未感染児童」という言葉で分かるように、患者の子どもは潜在的な感染者で、いずれ発症するという偏見があった。

 ハンセン病は「らい菌」による感染症だが、感染力は極めて弱い。日本では医学的根拠のないまま「恐ろしい伝染病」として、らい予防法の前身となる法律が制定された07年から予防法が廃止される96年まで、国による隔離政策が続いた。

 熊本地裁は、家族の被害について、修学拒否や村八分によって最低限度の社会生活を送れなかったり、就労拒否で経済的損失を被ったりしたほか、家族関係をつくることさえも阻害された-と具体的に指摘した。

 同時に、医学の進歩などを踏まえ、遅くとも60年には国に隔離政策廃止と人権啓発の義務があったと指摘した。国会にも隔離規定を廃止するなどの立法を怠る過失があったと指弾した。

 判決はハンセン病に限らず、社会にはびこる「偏見と差別」の恐ろしさを、改めて社会に問うているとも言えるだろう。

 偏見と差別は多くの場合、無知や根拠のない思い込みによる。同和問題、女性差別、異民族へのヘイトスピーチなどがそうだ。近年は科学的アプローチによる性的少数者(LGBT)への理解が世界的に進んでいる。

 判決を踏まえ、国はそうした大きな観点からも、未提訴の元患者家族を含めた救済制度を整備していくべきである。

 原告の平均年齢は70歳に近い。猶予はない。

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