不登校(5)支援の形 教師の見方

 九州北部の中学校で生徒指導を担う40代の女性教師は最近、些細(ささい)な理由で学校に来られなくなる生徒が増えたと実感している。

「些細な理由」でつまづき

 「変なあだ名で呼ばれてショックを受けた」「服に毛虫を付けられた」。ほとんどは一度だけの出来事。「やめて」の言葉を胸に秘め、学校を休んでいた。保護者らとのやりとりで何とか分かり、教師が相手生徒に「嫌な思いをしている」と代弁する。それで解決することもあれば、長期化することもある。

 ストレスのはけ口が友人にも家庭にもない。現実逃避をするかのように、ゲームや会員制交流サイト(SNS)、動画サイトにのめり込む。昼夜は逆転。親もお手上げ-。そんな生徒を何人も見てきた。

 不登校の理由が「分からない」という生徒も多い。ある男子生徒は数年たってから「リーダーにもなれる理想の自分と、そうではない現実に苦しみ、学校から逃れたかった」と語った。

 厳しい校則、定期テストに部活動。小学校に比べて中学校では一つ上の集団行動と個人の能力、そして「耐性」が試される。ただ「かつてと比べ、自ら問題を解決できない子が増えている」と女性教師は言う。中規模の学校で、不登校傾向の生徒は約40人に上る。

低下する自己解決力

 自分のクラスから不登校が出ると、担任は対応に追われる。電話連絡や家庭訪問を繰り返し、保護者、子どもと面談して家庭環境や日々の状況を把握。可能な限り登校を促す一方、学習も呼び掛けるなど戻ってきた場合の配慮も忘れない。

 福岡県の中学校に勤める60代の男性教師は数年前、不登校の男子生徒を受け持った。小学校のころ、当時の担任から強く叱られたことをきっかけに不登校になり、そのまま続いていた。

 家庭訪問して不登校が続く理由の一端が見えた。室内は足の踏み場もない状態で、においが鼻を突いた。親が育児放棄していたわけではないが、基本的な生活習慣が身に付いていない中で学校での集団規律になじめるわけがなかった。1歳年上の兄も不登校だった。

 生徒は同級生のいない夜だと学校に来ることができた。週1~2日、教室の自分の席に座らせ付きっきりで勉強を教えた。通常業務を終えた後の個別指導は負担だったが、信頼関係を維持するため他の教師には頼めなかった。生徒は不登校のまま卒業し、通信制の高校へ進学した。

 教師は対応の難しさをこう話す。「何度訪問しても会えない子はいるし、プライドの高い親だと関わりにくい。不登校をひとくくりにはできない」

助け合う心を呼び掛け

 増え続ける不登校に学校現場はどうあるべきなのだろう。九州の小学校に勤務する50代男性教師は、今春着任した小学校で3年生の担任になった。こちらから声を掛けなくても、児童は率先して体育の準備運動を始めたり、休み時間も仲良く遊んだりしていた。「手のかからないお利口さんたち」に感心した。

 逐一指示したり、叱ったりする場面も少なく、どちらかといえば楽な学級運営だったが、ある日の出来事に違和感を覚えた。給食エプロンを忘れてきた児童に教師が学校にあるものを貸しだそうとすると、別の児童が口を挟んできた。

 「ずるいんだー」「駄目、駄目」。教師に駄目出ししてきたのだ。忘れ物をしないよう指導はしている。それでも他人の失敗を責めるような姿勢は間違っている。「困ったときは助けようよ」。教師の呼び掛けにも、声を上げた児童が納得顔になることはなかった。

 子どもたちは学校で教科学習にとどまらず、社会性を学ぶ。その価値観は大人の考え方に左右される。教師はこれまで通り自主的に動く子どもたちを褒めつつ、失敗してもやり直せるという学級の雰囲気づくりに努めた。子どもたちは少しずつ変わっていった。

 既存の学校の枠組みで学べない子どもは、時に周りから異端児のような目を向けられ、孤立感を深める。結果、いつでも不登校に陥る危険性がある。

 「互いに監視せねばならないような息苦しさが緩んでいけば、学校に行きやすくなる子どもは増える」。男性教師はそう感じている。

不登校支援の在り方】文部科学省は2016年、「不登校児童生徒への支援の在り方」に関する文書を全国の教育委員会などに通知した。その中で、環境次第ではどの児童生徒にも起こり得るとした上で、不登校が続いて十分な支援が受けられなければ自己肯定感の低下を招くと指摘。不登校の背景は多様で複雑であるため、学校、家庭、社会が共感的理解と受容の姿勢を持つことが重要であり、周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながるとしている。その結果、児童生徒の社会的自立につながることが期待されるという。

 

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