こんなところに沖ノ島(4)宗像市池野の孔大寺神社 山と島夫婦神のロマンス

西日本新聞 ふくおか版

 木々に覆われた一本道をひたすらに登ってゆく。宗像市最高峰の孔大寺(こだいし)山(499メートル)。英彦山や宝満山と並ぶ修験道の場として知られる。足元の石段は860段。噴き出る汗。野鳥の鳴き声や吹き通る風に自然との一体感を感じる。

 ようやく石段を登り終えた8合目付近、イチョウの巨木の向こうに社殿が見えた。孔大寺神社だ。祭神は大己貴命(おおなむちのみこと)。「大国主命(おおくにぬしのみこと)の別名で、沖ノ島に鎮座する田心姫(たごりひめ)とは夫婦神です」と地元に住む元大学教員、船津建さん(73)が教えてくれた。出雲大社などに祭られる大国主命は各地に妻がいるが、田心姫もその一人だ。

 玄界灘を望む孔大寺山。「妻の島を、夫の山が見守っているんですよ」と船津さん。修験道の山で、こんなロマンチックな話を聞くとは思わなかった。

 孔大寺山がある池野地区は、豊かな緑に囲まれた古くからの農村。平成に入って団地開発が進み、勤め人世帯の移住が増えた。生活習慣の違う新旧住民の接点は少ない。「地域の良さを新旧住民で探そう」と、船津さんがリーダーとなって「地元学」として地域史も見つめ直している。

 神社で恒例となった沖ノ島の位置確認のアプリを起動すると、拝殿の立つ方向に島がある。ところが、この拝殿は海の方を向いていない。なぜか背中を見せている夫の姿…。

 地元にはこんな言い伝えもある。この山の神は気性が荒く、時に玄界灘を渡る船に災いをもたらしてしまう。そのため海を見ないよう背を向けて社が建てられている‐。「ギリシャ神話のゼウスみたいに、妻が多い大国主命に田心姫が怒り、向かい合っていると、夫婦げんかが絶えないとの判断もあるのでしょうか」。船津さんがユニークな解釈を披露する。

 毎年3月2日、孔大寺神社の祭りには女性たちがお守りを手作りする。赤い実のアオキの枝に、小さなわらじを結びつけたかわいいお守り。子どもが病気をしないようにと切なる祈りがこもる。神様夫婦の仲は人間には計り知れないが、海と山の神の優しい視線が、やはりこの地域を見つめているのだろうと感じた。

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